堂本剛、27年ぶり映画単独主演で新境地「久しぶりに主演でお芝居させてもらう役にしては難しすぎました(笑)」
堂本剛が27年ぶりに映画に単独主演する。それも『かもめ食堂』や『波紋』の荻上直子監督とのタッグで――そんな第一報が解禁されると、ネットには歓喜と驚き、そして期待の声があふれた。そんな本作、映画『まる』で、制作陣からの2年前からの熱烈オファーを受け、新境地ともいえる役どころに挑戦した堂本に話を聞くと、がっつり作品と役どころに向き合った深い思いのあふれるインタビューとなった。
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◆初めて挑戦する“受け身”なキャラクターに苦労
堂本が演じるのは、美大卒だがアートで身を立てられず、人気現代美術家のアシスタントをしている男・沢田。独立する気配もなければ、そんな気力さえも失って、言われたことを淡々とこなすことに慣れてしまっている。
ある日、沢田は通勤途中に事故に遭い、腕のけがが原因で職を失う。部屋に帰ると床には蟻が1匹。その蟻に導かれるように描いた○(まる)が知らぬ間にSNSで拡散され、正体不明のアーティスト「さわだ」として一躍有名になる。突然、誰もが知る存在となった「さわだ」だったが、段々と○にとらわれ始めていく…。
映画『まる』場面写真 (C)2024 Asmik Ace, Inc.
近年は堂本剛のクリエイティブプロジェクト「.ENDRECHERI.(エンドリケリー)」として音楽活動に精力的に取り組んできた堂本。「僕の事情ではなく、さまざまな事情があって最終的に2年かかったんですけど、監督の『ぜひご一緒したい』という熱意が大きかった」と今回のオファーを受けた心境を明かし、「抵抗はもちろんなく。芝居をしたくないわけではないですから。素直にうれしかったですね」と振り返る。「でも僕がそう思っていても物事って整わないと始まらないので。あとはもう周りの人の動きがどうなるのかなって、流れに身を任せながら2年くらいの月日が経ったという感じなんです」と。
初顔合わせとなる監督の印象を尋ねると、「荻上さんが仲良くされている俳優さん、女優さんの作品を見て育っている世代なんでね。荻上さんの作品も拝見して、空気感は肌感では理解していたんですけど、やっぱりアーティストさんですし、こちらがすごくインプットしてしまわない方が荻上さんの今回の味を引き出せそうな気もして。僕が理解しすぎた上で全部順応していくと違う気もしたんですよね」と語る。最終的には「僕なりの解釈で、こういうアプローチはどうですか?と幾度か投げることでいい化学反応が起きないかなっていうくらいの範囲に収めて」撮影に挑んだそうだ。
映画『まる』場面写真 (C)2024 Asmik Ace, Inc.
撮影現場では、「台本を読んだ時点で、いい意味で曖昧なシーンが多かった」と感じていたことから、演じてみないと分からないことが多いため、毎回シーンの撮影の前に監督とミーティングを重ねた。その時にもまだ監督の中に迷っている部分もあると感じたそうで、「監督はこれを描きたいんだと思うけど、これでいいのかな?っていう疑問も含めて、現場ではみんなでシェアしていました。その延長の芝居なので、本当に独特な空気感の作品に結果的にたどりついて。久しぶりに主演でお芝居させてもらう役にしては難しすぎました(笑)」。
演じる沢田については「皆さんもそうだと思いますけど、世の中の価値観、概念、常識、これをどれだけ意識して生きてるかによって、苦しくなる・ならないがあると思います。本来の自分じゃないけど何かを全うするために、その自分になって生活していく。これに何の疑問も持たないし、何の痛みも感じない人と、これでいいのかなと思う人。この仕事が本当にしたいのかさえ分からなくて、生活できるからこの仕事をしてるのかなとか、そういう疑問を沢田という人間は、人一倍強く持っているんです」と語る。「自分を信じて自分の夢に向かって、人が描いてほしいという絵じゃなくて自分が描きたい絵を描いてきた人。それがだんだん時代に惑わされ、ある種の自分というものを眠らされ、結果、大きな流れに巻き込まれていく。その中で吉岡里帆さん演じる矢島や、綾野剛さん演じる横山と対峙していき、いろいろな感情にとらわれていくんです」と説明する。
「めちゃくちゃしんどい寄り道をしたっていう話だと思うんです。答えが決まってるっていう大前提で寄り道をいかにするかっていう。でも沢田は受け身なんで、それが難しかったんですよね。寄り道の中で場を乱していくならもうちょっと演じやすかったかもしれないんですけど。そこは独特だったかもしれないですね」と沢田を体現するには苦労した様子も見せた。