クランクイン!

貫地谷しほり、“産後初舞台”挑む「もし私が成功しなければ、明日みんな死んでしまうかも」こまつ座代表・井上麻矢と思い語る

演劇

貫地谷しほり
貫地谷しほり クランクイン! 写真:五十川満

 井上ひさしが遺した不朽の名作『頭痛肩こり樋口一葉』が、2026年夏、こまつ座第160回記念公演として上演される。明治の激動期に若くして一家を支えた夏子こと樋口一葉と、彼女を取り巻く女性たちが織りなす切実で愛おしい命の物語だ。2022年に続き、主演を務めるのは貫地谷しほり。4年ぶりの再演へ向けて、作品が持つ普遍的な魅力や、それぞれのライフステージを経て深まる役へのアプローチについて、貫地谷とこまつ座代表の井上麻矢2人に話を訊いた。

【写真】産後初舞台! 笑顔が素敵な貫地谷しほり

■2回目の“樋口一葉”役に挑む覚悟

――今作はこまつ座にとって第160回の記念公演という大きな節目での上演となります。まずは、今の率直なお気持ちを聞かせてください。

貫地谷:4年前、こまつ座さんの舞台に初めて立たせていただきました。役者を始めたときから、いろいろな先輩方に「一度はこまつ座に出た方がいい」と言われていて、こまつ座は役者として通るべき道のようなものだと教わってきましたので、また同じ役を演じられる、戯曲を深堀りできることが本当にうれしく、今からすごく楽しみです。ただ、再演ということで今回は稽古期間が短いようで、ちょっとドキドキもしていますが(笑)、本当に多くの方に観ていただきたいです。

井上:この『頭痛肩こり樋口一葉』は、私たちの財産演目でもありまして、本当に大切に上演を重ねてきた作品です。すでに観たことがある方も、まだない方もいらっしゃると思いますが、井上ひさしの言葉を借りれば「毎年お盆の時期にこれをやってほしい」とおっしゃって頂くほど、私たちにとっては思い出の深い大切な作品です。今回、素敵な貫地谷しほりさんが前回に引き続いて一葉を演じてくださることを、本当にうれしく思っています。

――井上代表からご覧になって、この作品にはどのようなテーマがあると考えていらっしゃいますか。

井上:一葉は日本で初めての「職業夫人」と言って良いほど、その当時女性がものを書いて自立するなんて本当に稀有なことでした。作品の中では19歳で戸主として家を支えていますが、実際にはもっと随分若い時から一家を支えざるを得ない状況に置かれています。昨今の言葉で言えば、まさに「ヤングケアラー」だったと言えるかと思います。ただ、そうした社会背景を別においても、この作品には「亡くなった方たちから何を受け継いで、これからの時代に何を託せばいいのか」という普遍的なテーマが織り込まれていると考えています。

――貫地谷さんは、戯曲の印象をどのように受け止められましたか。

貫地谷:やっぱり「日本のシェイクスピア」と言われるくらいですから、セリフのリズムがすごく心地いい。面白おかしいけれどすごく悲しくて、でもその悲しいことを面白おかしく描いている。人が一生懸命生きている姿って、傍から見るとクスッと笑える部分があったりして、見終わった後に私自身もたくさんの学びがありました。

――以前にも井上ひさしさんの戯曲に出演されていますよね。

貫地谷:20代のときに、シス・カンパニー公演の『泣き虫なまいき石川啄木』(2011年)という舞台に出させてもらったのが最初でした。そのとき、共演者の皆さんが「いや、井上さんの作品はここがこう……」ってずっと熱く語り合っていらっしゃったんですが、当時の私は全く分からず。「そうなのか」と思いながら、すごくあっけらかんと現場にいたな、と思い出しますね。今読んだら、きっとまた全然違う印象になるのではないでしょうか。

――本作への出演は2回目となりますが、初演時と比べて心境の変化はありますか?

貫地谷:そうですね、やっぱり4年という時間が経っていることもありますし、私自身も出産をして母親になりました。映像作品の撮影などはありましたが、この作品が産後に女優として皆さんの前に立つ最初の舞台になります。子どもが生まれてから、以前よりも世間のニュースに目が向くようになりました。だからこそ、もっと地に足のついた一葉が演じられるんじゃないか、と。前回は「作家になるんだ!」という一つの希望に向かって突き進むような一葉だったんですが、今回は本当に「どうにかして生きていかなきゃいけない」という――もし私がこれで成功しなければ、明日みんな死んでしまうかもしれないという、もっと切実な思いを強く感じ取れているような気がしています。一葉って若くして亡くなってしまいますし、年齢的にはすごく若い。だけど、今の私たちの感覚からすると全然若くないというか、もう60歳くらいに老成しているイメージです。一家を背負い、貧乏にあえいでいた人なので、私なんかよりもよっぽど大人っぽい人物じゃないかと捉えています。

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■「やっぱり、女優が6人集まれば…」楽屋の様子にほっこり

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【公演概要】

こまつ座第160回公演『頭痛肩こり樋口一葉』

■公演期間

東京公演
7月29日(水)~8月30日(日)
劇場:紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA

群馬公演
9月5日(土)9月6日(日)
劇場:高崎芸術劇場

岡山公演
9月10日(木)9月11日(金)
劇場:岡山県芸術創造劇場ハレノワ(中劇場)

岐阜公演
9月14日(月)
劇場:可児市文化創造センターala(主劇場)

山形公演
9月18日(金)
劇場:川西町フレンドリープラザ

石川公演
9月22日(火)9月23日(水)
劇場:能登演劇堂

大阪公演
9月26日(土)9月27日(日)9月28日(月)
劇場:梅田芸術劇場シアタードラマシティ

■作
井上ひさし

■演出
栗山民也

■出演
貫地谷しほり 増子倭文江 香寿たつき 瀬戸さおり 岡本 玲 若村麻由美

【公式サイト】https://www.komatsuza.co.jp/
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