貫地谷しほり、“産後初舞台”挑む「もし私が成功しなければ、明日みんな死んでしまうかも」こまつ座代表・井上麻矢と思い語る
――演出は今回も栗山民也さんが手がけられます。栗山さんの演出の魅力、心に残っている言葉などはありますか?
貫地谷:栗山さんといえば、もう日本を代表する一番の演出家と言っても過言ではない方。実は今日、前回の台本を持ってきているのですが、付箋がたくさん貼ってあって、栗山さんに言われたことがたくさん書いてあります。栗山さんは、本当にたった一言でハッとさせられるようなことをおっしゃるんですよ。その一言で、お芝居がガラッと変わる。栗山さんの舞台って、照明もセットも衣装も、どんどん削ぎ落とされてシンプルになっていって、それが本当にかっこいいんです。今回も稽古時間は少ないですが、そんな短い時間でも、栗山さんはきっと私たちに魔法をかけてくれるんじゃないでしょうか。
井上:栗山さんは稽古場の中で一番、生き生きとされていますね。現場に入ったら、ご自身も心を明治の時代に置いて生活されているとお聞きしたことがあります。栗山さんの言葉を聞いていると、「演技をしてほしい」というよりも、「その時代に生きる人になってほしい」という、今を生きる俳優さんにとっては大変な無理難題をおっしゃっていて。でも、華美で派手なものではなく、削ぎ落とすことで、本当にその時代に生きた人たちを一瞬でも劇場に蘇らせる。今回も全員で一葉が生きた時代にワープして、人が生きることの豊かさや、次の世代に何を遺すのかに思いを馳せられるような演出になるはずです。
――ちなみに、台本のメモには、どんなことが書かれているのでしょうか。
貫地谷:栗山さんが若手時代、井上さんのところに原稿をもらいに行っていたときに感じたお人柄なども稽古場で話してくださったんですけど、そのお話で聞いた「井上さんは幸せの代償として必死に生きることを課している」という言葉をメモしています。この一言だけでも、当時の時代がいかに大変だったかが分かりますよね。そして、私はその時代を本当に生きているかのように見せなければならない、と大切にしている言葉です。
井上:栗山さんがよくおっしゃっていたのですが、しほりさんはホワッとした雰囲気の中に、普遍的な女性の強さや、ものを見る「眼力」をちゃんと持っていらっしゃるんですね。下町にどっぷり浸かって庶民の声を聞き、ピンからキリまでの女性を見つめ観察した一葉の眼力に、しほりさんは本当にぴったりですね。
貫地谷しほり
――キャストには、増子倭文江さん、香寿たつきさん、瀬戸さおりさん、岡本玲さん、若村麻由美さんとそうそうたる顔ぶれが並びました。共演に際し、楽しみにされていることはありますか?
貫地谷:やっぱり、女優が6人集まれば、楽屋はもう美容の話で大盛り上がりでございます(笑)。毎日毎日、「何が良かった」とか、皆さんのアップデートされた情報を交換し合うのが、ものすごく楽しみです。劇中の場面だと、香寿たつきさんが演じていらっしゃる、お鑛(こう)様が、崩れていくシーンが楽しみですね。お鑛様は、普段はしゃんとしていて、きりっとした武家の娘といったイメージなんですけども、物語が進むにつれてどんどん崩れていって……。それで言うと、劇中でみんなが酔っ払っているシーンがありまして、今回は皆さんがどんな感じでやるのかすごく楽しみにしています。私はそのシーンに入っていないので、客観的に楽しめるんです。
井上:お鑛さまやお母さんの多喜さんたちが酔っ払ってしまうシーンですね(笑)。実は彼女たちって、一葉が書いた物語の中の主人公たちでもあって、一葉の頭の中で起きていることが舞台化されているような、そんな面白みもあるんですよね。
■役者という仕事は「AIには代われないもの」
【公演概要】
こまつ座第160回公演『頭痛肩こり樋口一葉』
東京公演
7月29日(水)~8月30日(日)
劇場:紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA
群馬公演
9月5日(土)9月6日(日)
劇場:高崎芸術劇場
岡山公演
9月10日(木)9月11日(金)
劇場:岡山県芸術創造劇場ハレノワ(中劇場)
岐阜公演
9月14日(月)
劇場:可児市文化創造センターala(主劇場)
山形公演
9月18日(金)
劇場:川西町フレンドリープラザ
石川公演
9月22日(火)9月23日(水)
劇場:能登演劇堂
大阪公演
9月26日(土)9月27日(日)9月28日(月)
劇場:梅田芸術劇場シアタードラマシティ
■作
井上ひさし
■演出
栗山民也
■出演
貫地谷しほり 増子倭文江 香寿たつき 瀬戸さおり 岡本 玲 若村麻由美
【公式サイト】https://www.komatsuza.co.jp/