最新作『ソウX』、“衝撃の新ゲーム”は「最も厄介で不安が大きい」撮影に リアルな演技を監督が絶賛
(左から)ケヴィン・グルタート監督&トビン・ベル(C)2024 Lions Gate Ent. Inc. All Rights Reserved.
『ソウ』シリーズの現場では役者に限らず、誰がアイデアを出しても良いんだ、と監督は明かす。もちろん、ダメ出しをすることもあるが、自由に発言できるクリエイティブな空気が『ソウ』のスピリットなのだと。「トビンは毎回、自ら台詞を沢山考えて現場に臨む。基本的に全て撮影はするけれど、長くなりすぎる」。本作の初編集版は何と2時間45分もあったという。それを2時間に切り詰め、更にもう少し削った。「トビンにしてみれば、そこは残してくれよ!って場面もあったと思うけどね」と監督は少々、残念顔だ。
シリーズの根幹を継承して懐かしい面々を呼び戻しつつ、物語には新しい変化を盛り込む。今回はジグソウが頭脳派の詐欺師である強敵セシリア(シヌーヴ・マコディ・ルンド)に追い詰められることで、「ひとりの人間」としての側面が掘り下げられ、シリーズでも初めてとなる驚きのクライマックスが展開する。
セシリアがジグソウの声をまねて、彼を「自分のゲームで自滅するなんてね」と嘲る場面は「これはやった!」と感激したと自画自賛する監督。だが、セシリアの相棒パーカーを演じたスティーヴン・ブランドが「僕らが優位な立場を示すために座って台詞を言ったらどう?」と提案した芝居は断った。「映画のルールに反するからね。ジグソウは劣勢にあっても非常に危険な男だ。でも、そのアイデアを経て、怒りに燃える彼がセシリアの髪を掴む芝居が生まれた。油断できないヴィランであると、より明確になったね」。
ケヴィン・グルタート監督(C)2024 Lions Gate Ent. Inc. All Rights Reserved.
狂えるジグソウが考案する今回の“ゲーム”は、目玉吸引に脳味噌すくい、熱線責めとどれも強烈だが、一番のお気に入りは? 「僕のベストは何と言ってもヴァレンティーナ(ポーレット・エルナンデス)が足を切る場面」と監督は興奮気味に語る。脚本を読んだ製作陣が「これは無理」と断言した衝撃シーンだ。「こんな場面をリアルに演じられる女優はいないって。でも、オーディションで第一候補になったポーレットは圧倒的なポテンシャルを持っていた。『ソウ』シリーズのダントツだったよ」と大絶賛だ。
問題の足切りシーンではダミーボディや特殊メイクを複雑に組み合わせ、人体のリアルな動作を表現。監督にとって「最も厄介で不安が大きい」場面だった。撮影には2日間を要したが、女優のポーレット・エルナンデスは不平ひとつ言わず、何度も足切りに挑戦して絶叫し、汗まみれになり、涙を流した。もちろん、安全性は考慮したが「役柄に没入しすぎて本当に切っちゃうんじゃないかと、本気で心配になった」という。
観客にとっても忘れ難き体験となる“ゲーム”の数々を、監督は常に全力で演出する。例えば、頭蓋骨を削除する場面ではあらゆる効果音を駆使して、苦悶の表情を捉え、思わず体が震えるような生理的恐怖を刺激したい。「自分なら出来るだろうかとつい、自問してしまうような悪魔的創意に満ちた“ゲーム”の数々が、『ソウ』シリーズの人気の秘訣だ。ローラーコースターと同じで、1番楽しいのは急降下だからね。そして、ああ生きてて良かった!とカタルシスを感じて貰いたい。きっと内臓がひっくり返るような体験が味わえると思うよ」。(取材・文:山崎圭司)
映画『ソウX』は、本日10月18日より全国公開中。