「なんでも分かろうとするな」――脚本家・黒岩勉が“神”ドラマ『全領域異常解決室』に込めたメッセージ
――黒岩さんは、日曜劇場『TOKYO MER〜走る緊急救命室〜』『マイファミリー』『ラストマン-全盲の捜査官-』をはじめとして、これまで本当に多くの話題作を生んできました。脚本を書かれる際、たとえば家に大きなホワイトボードがあるとか、どういった感じで組み立てていくのでしょう。
黒岩:最初は手書きでノートに書いていくことが多いです。面白そうだと思うことをバーッと書いていく。そこから、それをエクセルに全部入れて動かしていく感じです。ゼロイチは手書きのほうが作りやすいですね。パソコンから入ると出てこない気がします。
――黒岩さんの作品は、エンタメでありながら今だからこその時代性や社会へのメッセージが込められています。その点は常に意識されていますか?
黒岩:テレビドラマとしてやる以上、「なぜ今これをやるのか」というところは絶対に必要です。今回も「なぜ今、神様たちの物語をやるんだ」という話は、最初からプロデューサーと何回もしてきました。今って、分からないことがあると、何でもネットやSNSを見て、フェイクも含めて自分の都合のいい情報を拾って、勝手に解釈してしまいますよね。そういった世の中が、すごく気持ち悪いと感じていました。
ドラマ『全領域異常解決室』最終回場面写真 (C)フジテレビ
――「分からない」ことが不安になってしまうのでしょうか。
黒岩:不安になるのが恐ろしいんですよね。なぜ不安になるかといったら、分からないものを分からないままでいいとする余裕がないから。情報がありすぎるんです。
――たしかに、情報がありすぎて不安になるのかもしれません。何かひとつを信じてしまったほうが楽だと。
黒岩:答えを全部出そうとすることが、今をダメにしている気がします。分かろうとするから苦しくなる。なんでも分かろうとするなよと。「全部を知らなくたっていいじゃないか」「全部知るなんて無理なんですよ」というのを、神様の視点としてやるのは意味があるんじゃないかと考えました。
――さて、いよいよ最終回を迎えます。
黒岩:8話からまたギアが変わって違う世界観になりました。9話・10話は、さらに振り切ったお話になっていますが、素晴らしい役者さんとチームのおかげで成立しています。エンターテインメントとして、最後まで見てよかったと思えるものには絶対なると思っています。
(取材・文:望月ふみ)
ドラマ『全領域異常解決室』最終回は、フジテレビ系にて今夜22時放送。