日笠陽子&戸松遥が明かす『劇場版モノノ怪 火鼠』の奥深さ「劇場でこそ“体感”すべき」

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『劇場版モノノ怪』プロジェクトの第二章にあたる『劇場版モノノ怪 第二章 火鼠』が、3月14日より全国公開。昨年7月に公開され、「第28回ファンタジア国際映画祭」で最優秀長編アニメーション賞にあたる今敏賞を受賞した第一章『劇場版モノノ怪 唐傘』に続く物語となっており、世を統べる天子の世継ぎをめぐり、大奥内でうごめく家柄同士の謀略と衝突に焦点が当たる。その大奥で天子に見初められ寵愛を一身に受ける時田フキ役・日笠陽子、大奥を取り仕切る最高職位・御年寄の大友ボタン役・戸松遥にインタビュー。事件の渦中に巻き込まれるキャラクターを演じる2人に、本作の見どころを聞いた。
【動画】日笠陽子&戸松遥が『劇場版モノノ怪 第二章 火鼠』の見どころを語り尽くす!
■美しい色彩と暗い人間模様
――『モノノ怪』という作品に対する印象を聞かせてください。
戸松:18年前にノイタミナ枠で放送されていたテレビアニメを見ていたのですが、唯一無二の色使いがとても印象に残っていました。その一方、ストーリーでは人間の汚い一面が描かれていて、そのコントラストに驚くと同時に、とても魅力的に感じたことを覚えています。
戸松遥
日笠:独特な色彩もそうですが、絵も歴史を感じさせるようなタッチになっていますよね。そして、人はどんなに綺麗に着飾っても、心の奥底に黒くドロドロした感情を持っていることを教えてくれる作品です。特にこの『火鼠』ではそれが顕著で、夢や希望のようなキラキラしたものではなく、人が持つ醜さを恐れずに描いているという印象を持ちました。
先ほど戸松が言ったように、作品のコントラストが魅力というのは本当にその通り。カラフルで綺麗だけど、黒い部分もある。それが合わさって1つなんだな、と。それでこそ人間なんだ、と感じられる作品だと思います。
日笠陽子
――今回の「火鼠」の脚本を読んで、どのような感想を持ちましたか?
戸松:一言では表せないほど、色々なものが詰まっていました。第一章もそうだったのですが、約2時間の映画とは思えないほどの分厚い台本が用意されていて。しかも、そんなに情報がたくさん詰まったシーンでも、一瞬でカットが切り替わってしまうんです。その絵替わりやカメラワークも“『モノノ怪』らしさ”になっていて、劇場のスクリーンで見ると、独特な色彩も相まって、その世界に吸い込まれてしまうと思います。
また、登場人物それぞれに思惑があって、考え出すとどこまでも追求できてしまいます。そして、追求した先に導かれるものが、見る人によって変わるのも本作の魅力。正解を提示せず、「これってこういうことだったのかな?」と見終わった後にもう一度噛みしめられる作品になっていると思いました。
日笠:現代に生きる我々とは世界観が違いすぎて、一度読んだだけでは理解しきれませんでした。子を成すことが正義とされているなんて、今の時代では考えられないですよね。しかし、それが当たり前だった時代があって、大奥という場所ではそれを巡って女同士が火花を散らしていました。
「私だったらどんな考えを持って、どんな生き方をしていたかな?」と色々考えましたが、正解なんてなくて。皆それぞれの考えや目的を持って、大奥での役割を全うしていたんだと思います。その考えや思惑が交わることで、『火鼠』で描かれる騒動へと繋がっていきます。脚本を読んで、怪異を生むのは人なんだなと思いました。そして、それを正すこともまた、人にしかできないことだと思わされる脚本になっていました。
『劇場版モノノ怪 第二章 火鼠』メインビジュアル(C)ツインエンジン
――演じるフキとボタンは、そんな大奥で起こる事件の渦中に巻き込まれるキャラクターです。2人の印象は?
戸松:真逆の2人ですよね。出自に関しても、町人出身のフキに対し、老中大友の娘であるボタン。一般的な考えを持ち、感情を見せるフキの一方、ボタンは「大奥をどうすれば良くできるか」と考えるビジネス思考タイプで、仕事に私情は持ち込みません。対立する役柄なので、見る方がどちらの立場に立つんだろうというのがすごく楽しみなんです。後半にかけて関係性に変化があらわれるので、そこも見届けてくれたら嬉しいです。
日笠:家柄は違えど、置かれている環境みたいなものは少し似ているんですよね。親がネックになっていて、ボタンは親の悪巧みに加担させられていたり、フキは父も兄弟も頼りないから「私がやらなきゃ」と思っていたり。バチバチに大喧嘩するシーンもあって、お互い本当に腹が立っているとは思いますが、考え方も何もかもが真逆かと言われると、そうではない2人なんだと感じます。
『劇場版モノノ怪 第二章 火鼠』場面写真(C)ツインエンジン