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石見舞菜香、心を揺さぶる演技の裏側──“信じること”で辿り着いた強さと優しさ

アニメ

■役者として貫く“強さ”とは?

――「真の侍とは?」「強さとは?」というテーマも本作の大きな魅力ですが、石見さんご自身が「これが私にとっての“強さ”だ!」と思う役者としての信念や、人生において大切にしている考え方はありますか?

石見:私にとっての“強さ”は、「信じること」なのかなと思います。自分を信じること、キャラクターや作品を信じること、そしてスタッフさんを信じること。それって簡単なようで、実はすごく難しいんですよね。とくに、自分を信じ続けるのは一番大変なことだと感じています。

経験を重ねるほど、自分の考えや解釈が増えていくものですが、やはり一番大切なのは「どんな作品を作りたいのか」という、監督やスタッフさんの想いをしっかり受け止め、信じて演じることなのかなと。それが私の中で考えた末に行き着いた結論でもあります。

また、先輩方の背中を見て「この方は強いな」と思う役者さんは、みなさん自分をしっかり持っていて、人としても素敵な方ばかりなんです。他人と比べず、愚痴をこぼさず、常にまっすぐな姿勢でお芝居に向き合っている。そんな姿を見ると、本当にかっこいいなと思いますし、強さってそういうところにも表れるのかなと感じます。

私は自信がないタイプなのですが、迷ったまま演じるよりも「これが自分の解釈だ」と信じて演じたほうが、相手にも伝わりやすいと思うんです。実際に、監督やスタッフさんも「その解釈、ありかもしれないね!」と新しい可能性として受け取ってくださることがあるので、自分の考えを信じることの大切さを実感しています。


――たしかに、「自分を信じ続ける」というのも容易ではないですからね。

石見:本当に難しいです。今の時代、情報があふれていて、噂話もすぐに広まりますし、自分の考えが揺らぐことって少なくないと思うんです。

以前、ある作品で私が演じたキャラクターのお母さんが、「疑うなんて誰にでもできる。あなたは信じてあげられる子になりな」というセリフを言っていたんです。そのとき、すごく心に響いて。そこからずっと考えてきたんですけど、やはり「信じること」って、人としても役者としても、一番難しくて、一番強さが試される部分なのかなと。でも、それを貫けたら、本当に強い人になれるんだろうなと思います。

――作品から人生を学ぶことも多いですよね。ちなみに、「役者としての転機になった」と感じる作品はありますか?

石見:デビューして間もない頃に参加した映画『さよならの朝に約束の花をかざろう』(2018年公開)の現場ですね。あの経験がなかったら、今の私はまったく違う役者になっていたと思います。それくらい、自分の基盤を作ってもらえた大切な作品です。本当に素晴らしい役者さんたちに囲まれて、目の前でお芝居を見て、共演して。一言発するだけで相手の気持ちをガラッと変えてしまうような、心からのお芝居をされる方ばかりで。

作品によって求められるものは違いますし、細かく考えながら作り込むことが必要な作品もあれば、逆にあまり考えずに流れに身を任せたほうが自然に仕上がる作品もある。正解がないからこそ、現場ごとに求められるアプローチを見極めることが大事なんだと、強く感じました。私はもともと、じっくり考えながら演じるのが好きなのですが、どんなに考えても自分の理想通りにいかない時間があったりして、悩むことも多かったんです。

そんなとき、先輩から「自分の好きなお芝居や作品をちゃんと持っていれば、自然とそこに寄っていく。いろんな現場に合わせながら、それをどう活かすかがプロの仕事なんだよ」と言われて。その言葉がすごく響いて、「この仕事を続けるなら、自分の好きなお芝居を大切にしながら、どんな現場にも対応できる役者になりたい」と強く思うようになりました。

『さよ朝』の現場で出会った役者さんの背中を見て、「私もこういう作品にずっと関わり続けられる役者になりたい」と思いましたし、その気持ちは今も変わらず、自分の目標として持ち続けています。


――大切な出会いですね。最後に、石見さんが理想とする生き方についてもお聞きしたいのですが、どんな人物を目標にされていますか?

石見:私にとって、「世界で一番優しい」と感じる人は母なんです。いつも穏やかで、温かくて、ずっと尊敬しています。でも、その優しさゆえに、生きづらそうだなと感じることもあります。気を遣いすぎて疲れてしまったり、本当は十分にできているのに、「自分は周りに迷惑をかけているんじゃないか」と思い込んでしまったり。すごく評価されているのに、いつも控えめで、まさに「実るほど頭を垂れる稲穂かな」という言葉がぴったりな人なんです。

そんな母を見ていると、「もう少し自分を大切にしてもいいのに」とか、「もっと楽に生きられたらいいのに」と思うこともあります。でも、どんなときも変わらず優しさを貫いているからこそ、周りの人に愛され、慕われている。母のことを苦手だと言う人を、私は一度も聞いたことがありません。

母のように、誰に対しても変わらぬ優しさを持ち続けられる人は、本当に尊く、そして強い存在だと思います。私が同じように生きるのはきっと簡単ではないけれど、それでも、自分なりの優しさを大切にしながら、周りの人を思いやり、歩んでいきたいなと思います。


(取材・文・写真:吉野庫之介)

 テレビアニメ『真・侍伝 YAIBA』は、読売テレビ・日本テレビ系にて4月5日より毎週土曜17時30分放送。(※一部地域を除く)

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