劇場アニメ『卓球少女 -閃光のかなたへ-』夏川椎菜×雨宮天×麻倉もも 青春を駆ける少女たちと3人の挑戦
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――お互いの演技で「ここがすごい!」と思ったポイントは?
雨宮:今回は中国語の原音に合わせた吹き替えだったんですけど、ナンちゃん(夏川さん)が演じたルオイは、原音と印象がけっこう違うんですよね。でも、それがすごく良かった。原音に引っ張られることなく、自分の中でキャラクターをしっかり解釈して、再構築してお芝居しているのが伝わってきて……「このルオイはナンちゃんにしか出せないな」って感じました。
麻倉:ルオイって、基本的にはあまり感情を表に出さないキャラクターなんですけど、やっぱり物語のクライマックス、特にラストの卓球の試合のシーンでは、静かな中に“燃えてる”感じがすごくあって。内に秘めた熱さというか、ジャン・ルオイの心の中にある炎みたいなものが伝わってきて、「うわぁ……かっこいいな」って思いました。
ルーも、優等生の顔とギャグキャラの顔を見事に切り替えていて、その振れ幅がめちゃくちゃ楽しかったです(笑)。本当に見ていて飽きないし、魅力がどんどん増していくキャラクターでした。
夏川:ルーは、とにかくギャグシーンでの爆発力がすごかったです。やりきり方が本当に見事で、あのテンションの高さと、その後ふっと引いていく感じ。まるで一つの芸術作品を見ているようで、「ギャグの芸術だ!」って思うくらい(笑)。聴いていてすごく楽しかったです。
そして、もちさん(麻倉さん)のシントンは、早口で卓球の知識をバーッと言わなきゃいけないシーンが多くて、もうそれだけでも大変そうなのに、応援のシーンではまた違った表現が必要で。試合中の仲間たち、ルオイやルーに向けて、いろんな“応援のかたち”を届けてくれるんです。あの演技に、私もたくさん力をもらっていました。
(左から)雨宮天、夏川椎菜、麻倉もも(C)Hua Mei. All Rights Reserved.
――三者三様の輝きがありますよね。それぞれのキャラクター目線で特に印象に残ったセリフやシーンはありますか?
夏川:私、この作品の中でとても好きなセリフがあって。それが、本編中で何度か出てくる「まだ終わってない」っていうセリフです。
すごく短い言葉なんですけど、それがこの作品全体を象徴しているように感じました。一度は挫折を味わったけれど、それでも前を向いて、今を一生懸命生きている。そんなテーマがぎゅっと詰まったセリフで、とても心に残っています。
雨宮:私は、ロン・シャオっていうルーの知り合いとのやり取りがあったシーンが特に印象に残ってます。ルーがギャグ顔になるくらい、テンション高くわちゃわちゃしていて(笑)。場所はただの町の歩道なんですけど、まるで舞台のようににぎやかで、あの空間がすごく好きでした。
ルーって普段は優等生で、ちょっとプライドが高くて真面目な子なので、あんなに崩れることって実はあまりないんですよね。でもあのシーンがあったことで、「この子、こんな一面もあるんだ」って、自分の中でルーの幅がぐっと広がりました。演じていても、とても楽しかったシーンです。
麻倉:私が好きなのは、シントンがルオイを誘って一緒にタピオカを飲みに行くシーンです。すごく静かで落ち着いた空間で、2人が少しずつ心の距離を縮めていく時間が流れていて。途中でちょっとしたアクシデントがあって、そこから一気に仲が深まるんですよね。
学園ものならではの“甘酸っぱさ”というか、“初々しさ”みたいなものがあって。観ていても、演じていてもすごく心が温まる、大好きなシーンでした。
――アフレコ現場の雰囲気はいかがでしたか?
夏川:生徒がたくさん登場する作品なので、とにかく出演者の人数が多くて。スタジオの中もかなりミチミチで(笑)、とても賑やかな収録でした。
しかもその日は収録の順番的に、最初に一番重いシーンをみんなで録ることになっていたので、もう冒頭からフルスロットル。みんな自然と集中モードに入っていて、「よし、やるぞ!」って一体感がありました。あの熱量は今でも印象に残っています。
雨宮:ほんとに「学園ものあるある」なんですけど、とにかく人数が多くて! スタジオには常時30人近くいて、しかも兼ね役の方もたくさんいるので、マイク前は常に混雑状態。自分のセリフを言いながら、背中で「次の人が入りたがってるのを感じる」みたいな瞬間が何度もありました(笑)。
それでも、声がかぶると録れなくなってしまうので、最終的には分けて録ることも多かったですね。限られた収録時間の中で、ものすごく集中して一気にやりきった感じでした。体力的にも結構ハードだったけど、やりきった感はすごくありました!
麻倉:人数が多いぶん、現場は本当にワイワイしていて、隣の方とおしゃべりしたり、すごく和やかな雰囲気でした。でも、卓球の試合シーンに入ると一転して、空気がピンと張り詰めるんです。見ているだけでも息をのむような緊迫感で、実際にアフレコしていると、ほんとに「息ができない!」って(笑)。
それに人数が多いと、単純にスタジオの酸素が薄くなるんですよね……。だんだん頭がふわふわしてきて、「あ、これはやばいかも」って。だからちょっとずつ換気しながら、声を掛け合って、マイク4本をみんなで使い回して。まるで部活みたいな感じで、すごくチームワークが生まれた現場だったと思います。
劇場アニメ『卓球少女 -閃光のかなたへ-』場面写真(C)Hua Mei. All Rights Reserved.
――また、本作の主題歌「アストライド」はTrySailが担当されていますが、どのような楽曲となっていますか?
夏川:楽曲は、まさに“王道の青春もの”といった印象で、TrySailとしてこういうまっすぐな青春感を歌うのは、実はけっこう久しぶりだった気がします。
爽やかな曲調なんですけど、明るいだけじゃなくて、少し泥臭さや、拳を突き上げたくなるような熱さも込めたくて。レコーディングでは、力強さを意識して歌う部分もあったりと、ただ眩しいだけじゃない、“リアルな青春”に寄り添ったような楽曲になったと思います。
雨宮:最初は10代のピュアな青春を描くような気持ちで歌おうとしていたんです。でもレコーディングの際にディレクターさんと話して、「もう少し“今だから歌える青春”にしよう」となって。ただの未熟さや希望だけじゃなくて、現実も知っている、でもそれでも夢や仲間に向かって突き進む。そういう“大人の青春”の要素を意識して歌いました。
私の場合、その“意志”が強く出すぎると“戦い”みたいになっちゃうので(笑)、「今のは戦いすぎたから、もう少しキラキラに戻して」とバランスを調整しながら歌っていました。聴いてくださる方には、そんな“輝き”と“意志の強さ”の両方を感じ取っていただけたら嬉しいです。
麻倉:私も最初に聴いたときは、キラキラした音の印象から「これは若い青春ソングだな」と思って、そういう方向で準備していたんですけど……、レコーディングの順番的にすでに2人が歌い終えていて、方向性が“今だからこそ歌える、大人の青春”になっていたので(笑)、自分もその流れに合わせて、声の出し方や表現を少しずつ変えていきました。
私も当初、希望やキラキラ感を前面に出そうと思っていたんですけど、レコーディングを進める中で、「もっとエモーショナルに」となって。自分の中の感情を深掘りしながら、ひとつひとつの言葉に気持ちを込めていきました。結果的に、3人それぞれの想いが重なって、とても胸に響く曲になったんじゃないかなと思います。
TrySail「アストライド」ジャケット(C)Hua Mei. All Rights Reserved.