草なぎ剛&樋口真嗣、『日本沈没』から育んだ友情が18年を経て『新幹線大爆破』で結実
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草なぎ剛
――『新幹線大爆破』といえば、高倉健さんが犯人役として新境地に挑んだ作品としても印象深い作品です。お二人にとって、この時に思い切った新境地に挑んだことが自分を成長させてくれた、転機となったと思われるような出来事や出会いがあれば教えてください。
草なぎ:樋口監督とご一緒した『日本沈没』は、僕にとって転機となる作品の一つです。超大作の作品でプレッシャーもありましたし、いろいろな特撮の技術を目にしたり、なかなか経験できないようなことをたくさんさせていただきました。ヘリのシーンなど「何度も撮ることはできない」という緊張感の中、撮影したことをよく覚えています。そういえば六平直政さんと一緒に焚き火の前で民謡を歌うシーンがあったんですが、それは全部カットされていましたね(笑)!
樋口:楽しい雰囲気になりすぎていたから(笑)!
――六平さんは、本作にも出演しています。
草なぎ:そうなんだよね! 六平さんとは『日本沈没』で出会って、それからいろいろな作品でご一緒していて。僕のことを助けてくれる役も多いんですよ。そういった意味でも、『日本沈没』はたくさんの出会いをくれた大切な作品で、僕にとって財産だと言える作品です。
樋口:僕は今回の作品が、自分にとって転機になるものだと思っています。よく行く東十条の焼き鳥屋があるんですが、そこの親父が「監督、そろそろ映画を撮りなよ」と言うんです。いやいっぱい撮ってるけど、と言うと、ゴジラやウルトラマンではなくて、人間を撮れと。厳しいことを言うんですね(笑)。そんな中、『日本沈没』から18年が経って、より深いレベルで人間を表現しながら、スタッフ、キャストみんなでいいものを作っていけるはずだと感じて臨んだのが本作。新幹線はもちろん、そこに乗り合わせた人間たちに向き合って、作品を作れたという実感があります。
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――草なぎさんは、生前の高倉さんと交流がありました。『新幹線大爆破』における高倉さんの魅力について、どのように感じていますか。
草なぎ:樋口監督と同じように、僕も『新幹線大爆破』は大好きな作品で何度も観ています。健さん演じる沖田が吸っているタバコの灰で時間経過を表現したり、斬新な演出も印象的で。現場でそういったアイデアを聞いた健さんが、「いいね!それ!」と興奮していたんじゃないかなと想像すると楽しくて。健さんがバイクに乗る姿もカッコいいし、セリフを発していなくても、説得力が画面からあふれてくるようで本当にステキなんですよね。僕もなんとか健さんに近づきたいと思って、“健さんグルーヴ”が出せないかなと思うこともあります。クライマックスの高市の表情にも、「健さんだったらどうするかな」と考えたり、健さんのように寡黙さの中に説得力をにじませるためにはどうしたらいいかと考えていました。
――今でも高倉健さんの存在は、草なぎさんにとって大きなものなのですね。
草なぎ:本当にそう思います。不思議なもので、健さんの声が聞こえてくる時があるんです。健さんと一緒に過ごした時間があるので、自分の中の想像で作ってしまっている言葉かもしれないんですが、僕には語りかけてくるように聞こえてくる。今回の撮影でも健さんのことを思い出すことが多くて、そうすると「剛、役者なんていうのは作り物で、嘘の世界を生きるものなんだから、お前自身がちゃんと生きていないとすぐに見透かされるし、観客になにかを植え付けることなんてできないぞ」という声が聞こえてきた。それは、そういう画を監督が撮ってくれたからこそ。樋口監督に、本当に感謝しています。
(取材・文:成田おり枝 写真:高野広美)
Netflix映画『新幹線大爆破』は、Netflixにて4月23日より世界独占配信。