アダム・クーパー「舞台の上で観客からの愛を感じたい」新演出『コーラスライン』への思い語る
――演じられるザックとアダムさん自身では、キャリアに重なりがあるようにも感じられます。ザックについてどのように捉えていらっしゃいますか。
アダム:ザックは以前の作品ではとても厳しい存在として描かれていて、1970年代にこの物語が描かれた時代の演出家はそういう存在でした。ですから「怖い人」という印象を持っている人が多かったと思うのですが、今回の作品では親しみやすく感じられるんではないでしょうか。オーディションも雰囲気が温かい空気感になっているように思います。もちろん、作品のベースは1970年代ですので、役者が番号で呼ばれ、あなたはダメ、あなたもダメ、ダメダメダメ…とオーディションで切っていく厳しさはあるんですけども、ザックを掘り下げ、少し人間味のあるキャラクターにしていくことを、今回の新しい挑戦としています。ザックがステージに上がり、役者と関わることでザックも彼らから影響を受けていることが、今回のバージョンの違いだと思いますね。
――ザックを演じるにあたり、ご自身のキャリアで得た経験は活かされていますか?
アダム:そうですね。1つは自分の経験と照らし合わせて、自分が役者として演出家に厳しくされた経験を思い起こして演じているところはあります。特に最初のほうのシーンで、どんどん役者を落としていかなければいけない場面では、そういう昔のことを思い出しながらやっています。一方で、役者たちの中には、前から知っている人も居れば、関係があった人もいて、その1人1人との歴史もあるんですね。ザックと彼らのキャラクターを考え、そこにチャンネルを合わせつつも、
ちょっと厳しさを取り入れることをしてみています。
――『コーラスライン』はとてもファンの多い作品です。オリジナル版のファンに、新バージョンの魅力を伝えるならば、どのようなところになるでしょうか。
アダム:オリジナル版をご覧になっていた方は、とても驚かれると思います。まったく新しいエネルギーを持った、現代版の作品になっていて、ドラマをもっと感じ取っていただけると思いますし、1人1人のストーリーにより注目していただけたりするんじゃないかと思っています。逆に、初めてご覧になる方は、素晴らしい歌や振付、ストーリーに惹きつけられるんじゃないでしょうか。人間性や生き様がとてもリアルに描かれていて、1人1人違ったバックグラウンドがあり、それぞれに葛藤している苦悩が見えてくるので、観てている方が銀行員であれ、学校の先生であれ、どんな方であっても何かしらの共感を得られると思っています。それぞれの葛藤があって、それを乗り越えていく人間としての美しさは、全世界共通で共感できるテーマではないでしょうか。あとは…私が出ていることですね(笑)。