アダム・クーパー「舞台の上で観客からの愛を感じたい」新演出『コーラスライン』への思い語る
――それはとても重要で、大きな魅力ですね(笑)。アダムさんは、オーディションで選ばれる側も、選ぶ側もたくさん経験されているかと思います。ご経験の中から、たくさんの人の中で抜きん出て選ばれるには、どのようなことが大切だと考えますか。
アダム:イギリスにも素晴らしいダンサーはたくさんいて、抜きん出て素晴らしい人もたくさんいます。ただ、私がオーディションをするときは、その人が人として興味を惹(ひ)かれるかどうかを大切にしています。多くのダンサーが前に出てきて、私を見て! と出てくるんですが、私はそういう人よりも、後ろの方でちょっと恥ずかしそうにしている人のほうに惹かれることが多いですね。逆に、前に出てくる人たちには、なぜ前に出てくるのかと、その理由を考えてしまいます。静かなる自信がある人は、前に出てくる必要性を感じていないんですよ。もう、自分には自信があると思っている人たちなんですね。あえて自分を必要以上にアピールする必要がない。あと、私が人に教えるときにいつも伝えているのは、オーディションをする側の人に質問をしなさい、ということです。その質問によって、選ぶ側は人となりを見ることも出来るし、言われたとおりに動くことだけをしている人たちの中で、この人は考えて動いているんだな、ということがわかるので。もちろん、良識ある質問をする場合ですけどね。
――舞台を志す人はもちろん、多くの人にとってヒントになる言葉だと思います。今回の公演では、東京から始まり、仙台、大阪をめぐってまた東京に凱旋します。日本のツアーで楽しみにしていることは?
アダム:まずはシンプルに、日本に来るのが大好きなんです。日本のみなさんに会えることは、とても楽しみです。あと、仙台に行くのは初めてなので、そこも楽しみですね。日本に来ると、私自身がすごく受け入れられていると感じることができるんです。日本ではバレエやコンテンポラリーダンス、演劇にも出演させていただきましたし、ミュージカルコンサートに出させていただきました。そのどれに出演したときも、たくさんの人から愛されていると感じることができました。ちょっと自分勝手な気持ちかも知れませんが、役者としてはやっぱり、舞台の上で愛されていると感じたいんです。日本の皆さんからは、いつも愛を感じることができるので、それがとてもうれしいんですね。
――日本のオーディエンスの特徴的なところはありますか。
アダム:日本の皆さんはリスペクトをもって観てくださるので、すごく静かに観てくださる印象がありました。私が日本で初めて公演に出たのは36年ほど前ですし、特にバレエの公演ではそういう印象がありましたね。ただ、日本でもいろいろな公演があってお客さんもたくさんご覧になられていることもあってか、以前よりも声を出して盛り上がったり、拍手も大きくなったりして、そこは変化を感じますね。特に『雨に唄えば』では、何度か公演をさせていただいたので、日本に来るたびに観客の皆さんもどんなふうに反応すればいいのか学んでいってくださったのか、変化を感じましたね。私たちへのリスペクトを感じられながらも、声援をいただいたり、笑ってくださったりして、役者としてはそういう反応がとてもうれしかったです。
――私たちもまた日本に来てくださることをとても嬉しく思っています。公演を楽しみにしている日本のファンに、メッセージをお願いします。
アダム:ぜひ観に来ていただきたいです! この新しいバージョンはすごくエネルギーに溢れていますし、感情的にもとても揺さぶられると思います。そして何より、素晴らしいダンスと音楽でお届けしますので、たくさんの皆さんにお会いできるのを、とても楽しみにしています!
(取材・文:宮崎新之 写真:平岩亨)
ミュージカル『コーラスライン』は、東京建物 Brillia HALL にて2025年9月8日~22日に日本プレミア公演、仙台、大阪での地方公演の後、再び東京に凱旋する。