甲斐翔真、コロナ禍と共に始まった舞台人生 乗り越えた今、より楽しんで舞台に向き合える
――今年の帝国劇場 CONCERT『THE BEST New HISTORY COMING』を拝見したのですが、井上芳雄さんと歌われた『エリザベート』の「闇が広がる」が素晴らしかったです。大先輩の皆さんと同じ空間を共有したあの経験は甲斐さんにとっても貴重な経験だったのではないでしょうか。
甲斐:劇場を味方にするってよく言うじゃないですか。それを肌で感じたのはあの時が初めてでした。市村正親さんが帝劇最後の『ミス・サイゴン』の「アメリカン・ドリーム」を歌われた時に、まるで『美女と野獣』の皿やスプーンのように、劇場の壁も椅子もすべてが市村さんの味方をしている感じがしたんです。それってすごいことだなと思って。作ってきた歴史やご自身の説得力だと思うんですね。そうしたことを勉強できた気がします。いま現時点の僕が理解することは到底無理なんですけど、目の当たりにした分、いつかこうなりたいという思いが生まれました。
――今年28歳になられますが、これから30代はどんな俳優さんになっていきたいですか?
甲斐:作品への取り組み方や新しいものを探したい欲など、このスタンスは変わらずにいたいです。ただ年齢は重ねていきたいんです。役の幅が広がることによってできることも広がっていきますし、新しい世界も広がっていくので。やりたい役もあるのですが年齢的にあと5年、10年しないとできない役だったりするんですよね。なんなら早く年を取りたいくらいの気持ちもあります(笑)。
――お忙しい毎日かと思いますが、プライベートで楽しみにされていることはありますか?
甲斐:最近いいヘッドフォンを買いました。これまでイヤホン派だったんですけど、けっこう失くしてしまって。物理的に大きいものにしたら大丈夫だろうと思って買ったら、改めてヘッドフォンのすごさに気付きました。早く買っておけばよかった(笑)。もう音が全然違うんです。360度音がやってくるんですよね。ヘッドフォンを付けて映画を観たら、まるで映画館にいる感覚で。そのヘッドフォンで音楽を聴きながら稽古場や劇場に通うのが自分の中の楽しみになっています。
(取材・文:近藤ユウヒ 写真:高野広美)
ミュージカル『マタ・ハリ』は、10月1日~14日東京・東京建物 Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)、10月20日~26日大阪・梅田芸術劇場メインホール、11月1日~3日福岡・博多座で上演。