菊川怜、“東大”が第一に来ることに葛藤も「もっと肩の力を抜いて考えられればよかった」
――あくまで菊川さんを知るうえでの窓の一つとして聞かれているのではなく、“東大”というフィルター越しに自分を見られてしまっているという感覚もあったのでしょうか。
菊川:“東大という枠にはめて見られたくない”という葛藤はあったと思います。だけど今思えば、実際に東大にいたんだから、それはそうなんですよ(笑)。もっと肩の力を抜いて考えられればよかったんですが、当時は、その物差しが私の第一面に立ってきてしまうことへの葛藤は、どうしてもありました。でも今考えると、そのおかげで、いまここにいられるのだと思います。
――しっかりキャリアを積まれてきて、現在は“東大出身”が、菊川さんのプロフィールの“一部”になっていますね。
菊川:というか、そこは私が考える必要がなかったなと。周りの方がどう見てくださるかということと、自分がどうあるかというのは別物なので。“こう見られたい”と思った時点で、もうそれは自分じゃないんですよね。“東大っぽく見られたくないから、もっと普通に、こう振る舞おう”とか。その時点で自分じゃない。
――なるほど。
菊川:自分に一本軸が通っていなかったのだと思います。未熟だったんです。自分としての軸がちゃんとあれば、東大出身であることも、自分の一部として受け入れて、ドンとしていられた。自分の軸がちゃんとないままに社会に出たことで、グラグラと勝手に振り回っていたのだと思います。
――でもそうした葛藤は当然ですし、そこを踏ん張って仕事をされてきたから、いまの菊川さんがいるんですね。
菊川:そうですね。試行錯誤しながら、いろんな経験をさせていただくなかで、長い時間がかかったけれども、自分というものを作ってきたのかなと思います。
――そして今また、新たに“母”というご自身の面が。
菊川:はい。人生には次から次へと新しいことがやってきます。自分を作ってきたといっても、固まりません。人生、ずっと勉強。なんていうとまた生真面目発言になっちゃいますけど(笑)。でもそれがあるから、成長できるし、飛躍できる。なので、変化にもがくことはいいことなのだと捉えようと思っています。
(取材・文:望月ふみ 写真:高野広美)
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