芳根京子&高橋海人が心に刻む、“本当の自分”と“外から見られる自分”のギャップの乗り越え方
関連 :
高橋海人
――本作では、自分の人生を生きることへの葛藤や迷いが描かれますが、おふたりも表に出られるご職業の中で、“本当の自分”と“外から見られる自分”のギャップで悩まれたりすることはありますか?
芳根:現場によって自分が何をすべきかということが違うので、その瞬間その瞬間に対応している自分でいるっていう感覚です。決してどれも自分じゃないわけではないというのが前提で、テレビに出ている自分、家にいる自分で昔はその差みたいなものに悩んだこともありましたが、今は全部私!どれも全部作っているわけではなく、本当のことを思って表現していて、「いいんだよ、別に」と自分で自分を受け入れ始めたらすごく腑に落ちた感覚になりました。
お仕事をさせていただいている時、家にいる時、ギャップを感じてしまうこともあるけれど、どれもその瞬間一番この場でいい自分を選んでいるだけで自分だからねって。どれも自分で嘘はない、自分が自分を一番信じようって思っています。
――マインドチェンジのきっかけは何かあったんですか?
芳根:それまでは家に帰ってから疲れているなと思うことが多かったので、なにをどう無理したのかな?と考えた時に、発想を変えればちょっと気持ちが軽くなるというか。やっていることはあまり変わらないけれど、別に苦しむ必要ないよねって、自分と向き合ったら軽くなりました。
高橋:今の言葉を聞いていいなと思いました。以下同文にしたいくらい、好きな言葉でした。
“哲学”っていうと重たいというか、なにそれ?みたいに思われるかもしれませんが、僕は哲学を持っている人ってすごく強いと思っていて。「病は気から」っていうじゃないですか。感情で人生はかなり左右されているなって思うから、自分の哲学を持つことって大事だなって思います。
あれ? 質問なんでしたっけ?(笑)
芳根:それこそ高橋君はギャップがあるじゃないですか。
高橋:今世間のみなさんに知ってもらってる自分って100%じゃなくて、自分の中の一部分しか見せられていないから、それだけで判断されちゃうのはもったいないなって思ったりもします。でも、人が人を知ろうとしても誰だって100%知ることができるわけではないし、知っていこうとすると、膨大な時間がかかるじゃないですか。
芳根:自分でも自分を100%わからないもんね。
高橋:わかんないです(笑)。だからあまり見え方を考えず、自分のことだけは信じていようとは思っています。世間の人にどう思われてたって、自分が自分を愛せていないと人のことも愛せないし。
割と自分はメソメソしている時期が長くあって、今でもたまにメソメソしちゃうんですけど、でもそんな時は、自分が今まで歩いてきたことと、経験したことと、選択してきたこと、全部自分で選んでることだから、それに対して自信を持てていないとダメだなって思い直します。自分だけブレなければ、何を言われようと徐々に伝わっていくんじゃないかと思っています。
映画『君の顔では泣けない』場面写真 (C)2025「君の顔では泣けない」製作委員会
――30歳を迎え大きなターニングポイントを迎える陸とまなみの姿も本作の大きな見どころだと感じます。
高橋:体を貸し借りし合っている状態で過ごしているから、戻りたいって気持ちもあったり、今の状態でできたたくさんの思い出で戻りたくないっていう気持ちもある。お互い同じ気持ちであってほしいという願いもあるけど、相手にも積み重なってきたものがあるって知っているからこのタイミングで戻ろうと強くも言えなくて。
芳根:15歳で入れ替わった時と、いざ30歳で元に戻るってなったら、2度目のほうがより複雑化すると思います。15歳~30歳で作り上げてきたものってどうしたって壊せないものがたくさんあると思うんです。結婚もそうだし、30歳になって戻れるってなったとしても、簡単な話ではなくなってしまっているというのがこの作品の特に面白いところだなって思います。
高橋:選択するって本当につらいですよね。入れ替わっちゃいました!の瞬間のほうが、気持ち的にはまだ楽な気がします。
芳根:15歳までの記憶だけで戻ってしまっても、やっぱり生活面など大変なことがここから先に待っていますよね。自分の体は戻ってほしいけど、状況が…、環境が…っていう。
高橋:苦しくなってきた(笑)。どっちの選択をしてもいいこともあるし悪いこともある。2人には幸せであってほしいですよね。
芳根:15年入れ替わったという事実は変わらないからつらいと思います。またここから人間関係も築き上げていかなければいけなくて、「この人、誰?」みたいな人もきっといっぱいいて…。現実的に考えると…。
高橋:なかなかえぐみがある作品ですね。
芳根:2人で取った選択や向き合ってきたことを、絶対に悪いことじゃないと思ってほしいですし、絶対に幸せになってほしいと思います。
(取材・文:近藤ユウヒ 写真:米玉利朋子[G.P. FLAG inc])
映画『君の顔では泣けない』は、11月14日公開。

