海宝直人、舞台デビュー30周年迎え思い描く未来「日本で作られた作品を世界に」

2025年、舞台デビュー30周年を迎えた海宝。数々の有名作品に出演し、活躍を続けてきた海宝だが、ターニングポイントを尋ねると、2016年の劇団四季『アラジン』への出演と2015年に出演したミュージカル『レ・ミゼラブル』を挙げた。
「25歳のときに出演した『レ・ミゼラブル』は、子どもの頃からずっと好きだった作品で、いつか自分も出演したいと願っていた作品でした。それまではソロのある役をいただける機会がなかなかなく、自分のパフォーマンスをしっかりと観ていただくことが難しかったので、『レ・ミゼラブル』はたくさんの方に観ていただき、認知していただけた大きな機会となりました」。
そうした数々の経験を経て、「たくさんの刺激をいただいた30年だった」と海宝は話す。
「たくさんの素晴らしい役者さんたちと出会わせていただいて、どう作品に向き合うのか、どう稽古に向き合うのかを学ばせていただきました。ここ数年は、オリジナル作品に向き合わせていただく時間が長かったのですが、前向きなディスカッションを重ねることや自分でクリエイトすることの大切さを改めて感じましたし、責任を持って自分で発信していくことが大事だなと思うようになりました」。
海宝の言葉からは、「オリジナル作品」へ挑む強い思いも感じる。その想いについて問うと、「もちろん長く上演されているような作品にも出演していきたいですが、オリジナル作品や日本初演の作品、原作はありながらも新しくミュージカル化する作品など、新しいものにも向き合っていきたいという思いがあります。僕には、日本で作られた作品が世界で通用する作品となって、長く愛されるものにしていきたいという夢がありますし、それは日本のミュージカルに携わっているクリエイターや役者みんなが感じていることだと思います。そうした作品の1つのピースとして、作品を良くする一部として働けたらという思いがあります」と力を込めて語る。そこにはミュージカルへの大きな愛を感じた。

2026年は本作からのスタートとなる海宝。改めて2025年を「たくさんの壁にぶつかりながらもがいた1年だったかなと思います」と振り返る。
「今年はミュージカル『イリュージョニスト』から始まりました。(2021年にコロナ禍で)コンサートバージョンでの上演はありましたが、今回、全く新しい作品として作り上げました。稽古はタイトでしたが、演出のトム・サザーランドさんが求めるものをカンパニー全体で作り上げていき、素敵な時間を過ごせたと思います。
その後、30周年記念コンサートとして『ever』、そしてオーケストラコンサート『more』という公演も開催させていただきました。自分で構成や演出もやらせていただき、新しい経験ができましたし、とても楽しかったです。ディレクションというとおこがましいですが、他のキャストの皆さんが輝くためにどうすれば良いのかを考え、お客さまに称賛していただくことが自分の幸せになるということも感じました。そうした経験もあり、もがいて戦った1年だったのかなと改めて思います」
そんな2025年を経て、2026年は「まずは、良い作品だと感じていただけるような作品を届けることです。『ISSA in Paris』は、オリジナル作品なので正解がないんです。稽古では、いろいろな意見のぶつかり合いがあると思いますが、その中から見つけ出して、良いものをお届けできたらと思います」と前を見据える。

最後に、改めて海宝にとって「ミュージカルとは?」と質問すると、「なんでしょうね…」と考え込みながらも、「新しい世界を見るための“窓”のようなものなのかなと思います」と答えた。
「自分が観劇したときも、自分が役を演じるときも、『ここから見るとこんな景色が見えるんだ』と感じることがたくさんあって。社会を見るための窓のように思うことがあります。演劇はお客さまに届けたいメッセージが込められています。物語を通して、自分が信じていたものとはまた違う視点が得られるかもしれない。なので、今の時代を覗き込むための窓でもあるのかなと思います」。
これからもミュージカル界を牽引していくであろう海宝。そんな海宝がどのような新しい世界を見せてくれるのか。そして、ミュージカル『ISSA in Paris』ではどのような新しい物語を作り上げるのか。期待して開幕を待ちたい。(取材・文:嶋田真己 写真:高野広美)
『ISSA in Paris』は、東京・日生劇場にて2026年1月10日~30日、大阪・梅田芸術劇場メインホールにて2026年2月7日~15日、愛知・御園座にて2026年2月21日~25日上演。

