イッセー尾形「遊びの余地のある役は大好き」 55年の活動を支える「誰かを楽しませたい」という思い
舞台、ドラマ、映画と、ジャンルを問わずさまざまな作品で唯一無二の存在感を放つイッセー尾形。2026年は、BS時代劇『浮浪雲』(NHK BS/毎週日曜18時45分)で主人公が営む問屋場「夢屋」の番頭・欲次郎を軽やかに演じる。このたびクランクイン!では芸歴55年を迎えるイッセー尾形にインタビューを敢行。本作の魅力や、長いキャリアにおいて忘れられない作品などを聞いた。
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◆遊びの余地がある役は大好き
ジョージ秋山の名作漫画を原作にドラマ化した本作の舞台は、幕末の品川宿。女物の着物をまとい、髪をおでこの前で結んだ風変わりな男──その名も「浮浪雲」。ふわふわと雲のようにつかみどころのない風体で日々を気ままに生きながらも、誰よりも深く人を見つめ、いつの間にか人々の運命を優しく動かしてゆく。主人公・雲を佐々木蔵之介が体現するほか、妻・かめを倉科カナが演じる。
1973年から44年にわたり長期連載され、過去には何度か映像化もされた人気作。出演オファーに尾形は「制約がないな」と快諾したという。
「時代劇でカツラだから、自由でいいなと思って。カツラをかぶっちゃえばこっちのもんだ、なんにでも自由になれるんじゃないかと(笑)。身分制度があった時代なので社会的には制約はあるんですが、役者としてはその制約をバネに自分の中でデフォルメしてできるのではないかと思いました」。
BS時代劇『浮浪雲』場面写真 (C)NHK
演じる欲次郎は、店のことには一切興味を示さずふらふら遊んでその日を暮らす主人の雲に代わり、商売の一切を取り仕切る番頭だ。
「番頭の欲次郎は仕事を仕切らなきゃいけない。でも旦那の雲っていうのは遊んでばかり。そこにギャップがあるからデフォルメできて楽しめる。欲次郎は、自分の下で働いている者たちには威張りくさって命令したりもする。そこの芝居で遊べるんじゃないかと感じました。遊びの余地がある役は大好きなんです。役に遊びがなかったら無理に作るくらい(笑)」。
原作を読んだことはあるそうだが、「原作にいましたか?」と尋ねるくらいに欲次郎というキャラクターの印象はなかった。しかし、「僕の中では原作にない役。こうしなきゃいけないというのがなかったから、逆によかったのかなと思います」と楽しみながら役に臨んだ。
「強い者には負ける、弱い者には強がる。情けないなとはどっかで思ってるんですね、きっと。そういう庶民性みたいなものを出せればいいなと思って。そこを愛するというのかな。それが私の仕事だなと思っています。台本には書かれていない、さまざまなニュアンスの空気があると思うんですけど、それを現場で探す。こっちにいい顔、こっちに辛い顔をする。それをどう裁いているのか。逡巡や迷いはないのか。そうしたものを現場で拾えればいいなと思って演じました」。

