イッセー尾形「遊びの余地のある役は大好き」 55年の活動を支える「誰かを楽しませたい」という思い

2026年、尾形は芸歴55周年を迎える。そう伝えると「え! そうなんだ。折り返しですね」と笑顔。
大河ドラマや朝ドラ、最近では『宙わたる教室』などのドラマ、『トニー滝谷』『太陽』といった映画、さらにはライフワークの一人芝居をはじめとする舞台と、さまざまな形で芝居に取り組んできたが、演じるにあたり姿勢に違いはあるのだろうか?
「違いますね。舞台でお客さんが目の前にいると、300人、400人の皆さんを楽しませなくちゃいけないというのがはっきりしている。映像になるとカメラがあるだけで、あとはスタッフがいるだけですから。スタッフを笑わせてやろうという気になりますよね。でも本番はシーンとしてますから分からないんですよ、反応が(笑)」。
姿勢に違いはあれど、ベースとして共通するのは「誰かを楽しませたい」という気持ちだ。作品を選ぶ際にもそうした点を基準にしているという。
「あとは、自分が楽しんでるのか、楽しんでないのかのセンサーもあると思います。やらされているのか、やりたくてやっているのかでまた大きく違う。自分が面白がってるのか、やりたいと思ってやっているのか、それは問いかけるようにしています。結果的にみんながおかしかったと笑ってくれたとしても、でもそれがやらされた立場だったら、あかんのですよ。あくまで自分がエンジンかけないと」。

これだけのキャリアを誇り、「イッセー尾形の代表作とは?」と10人に聞いたら10人が違う作品を挙げるのではないかと思うほど、さまざまな役どころを演じてきた。そんな中で自身の忘れられない作品は何になるのだろう?
「『未解決事件』(2018年/NHK総合)かな。NHKスペシャルで放送された実話を基にしたドキュメントで、1995年に起きた警察庁長官狙撃事件を扱った作品でした。その実録ドラマで、警察の見解ではある宗教団体が犯人だと見ているんだけど、俺が犯人だって言い張っている中村という男を演じました。黒崎博さんというディレクターがまだNHKにいた時に作った番組で、國村隼さんとの共演で。映像を見ると、2人で取調室にいるんですけど、本当に刑事さんと対峙しているようで、ドラマをやっているような空気じゃないんですよね。ほかの作品だと大抵は『ドラマやってます』『役者やってます』みたいなスタンスなのですが、あの作品は、それこそ僕のドキュメンタリーみたいな感じで。その場に僕自身が立ち会っているような、そんな不思議な体験でした」。
2月には74歳を迎える。1月には舞台『チェーホフの奏でる物語』の上演が控えるなど活躍が続くが、これから挑戦してみたいことを尋ねてみた。
「若い人をやらなきゃいけないと思っているんです。若い時からずっとじいさんやばあさんばっかりやってきたので、若いやつをやりたい(笑)。どこが面白いのかっていうのはまだ見つかっていないけれど、それを見つけなきゃいけないというのがこれからの私の仕事ですね。最終的には、人間を面白がりたいというのがあります。人間についてはいろんな本が出ているし、いろんな情報がある。でもそこに絶対に載らないものがあるはずなんですよ。それが自分の演劇なんだと思う。私はそう思っています」。
(取材・文:渡那拳 写真:松林満美)
BS時代劇『浮浪雲』は、NHK BS/BS プレミアム 4Kにて1月4日より毎週日曜18時45分放送<全8回>(※初回のみ19時スタート)。

