『無職転生III』加隈亜衣が見つめたエリスの不器用な成長 ルーデウスへの思いは「恋愛感情だけでは足りない」
――エリスはルーデウスのもとを離れ、「強くなる」という決意を胸に剣の道へ進みました。その決断を、加隈さんはどのように受け止めましたか?
加隈:そこに至るまで、エリス自身、本当に濃い時間を過ごしてきたと思うんです。大変な目にもたくさん遭っていますし、家族を失うという出来事もあった。でも、彼女はもともと強い意志を持っている子なので、そういう痛みや傷が見えづらいところもあるのかなと思います。
家族を失ったと知ったときも、エリスは泣いていないんですよね。「私、ひとりになっちゃった」という弱音のようなものをルーデウスにこぼすことはありましたけど、涙を見せるわけではなかった。そんな彼女が唯一、ボロボロ泣いたのが、第1期でオルステッドと戦って「ルーデウスが死んじゃうかと思った」と言ったときなんです。
家族を失ったときにも流さなかった涙を、ルーデウスを失うかもしれないと思ったこわさで流した。戻ってきてくれた安堵も、不安も、恐怖も、全部が一気にあふれたんだと思います。それくらい大きな衝撃を受けた彼女が、胸に決めたことだったんですよね。
ただ、エリスは言葉にするのがすごく苦手な子です。そこにエリスの良さも出ていると思うんですけど、そのブレなさや真っすぐさ、素敵な部分が、見事に裏目に出てしまった別れ方だったなとも感じています。
あの決意自体は、すごくかっこいいですし、エリスらしいと思います。ルーデウスからしたら「言ってよ」と思うのも分かるんです。でも、きちんと言葉にして別れることは、エリスにはできなかったんだろうなと。
言えないことは、彼女なりの弱さでもある。もしかしたら、言ってしまったら行けなかったのかもしれない。決心が鈍ってしまうから、言えなかったのかもしれない。そういう不器用さも含めて、エリスらしい選択だったのかなと思います。
テレビアニメ『無職転生III ~異世界行ったら本気だす~』場面カット(C)理不尽な孫の手/MFブックス/「無職転生III」製作委員会
――初登場時は家庭教師としてやってきたルーデウスに強く反発していたエリスですが、旅や別れを経て、彼はエリスにとってどんな存在になっていったと感じていますか?
加隈:最初は「また追い出してやるわ!」くらいの気持ちだったと思います。出会い方も、馬乗りになって殴りかかるような形でしたし(笑)。でも、その出会いから割とすぐに、エリスはルーデウスのすごさを目の当たりにして、助けてもらって、少しずつ彼の存在が大きくなっていったんだと思います。
ルーデウスは、エリスにとって先生でもあり、お兄ちゃんのような存在でもあり、家族でもある。本当に“すべて”に近い存在なんだろうなと、ずっと感じていました。
恋愛感情という言葉だけでは、たぶん足りないんです。呼吸をするみたいに、空気みたいに、酸素みたいに、エリスにとっては当たり前に必要な存在。大切にしようと意識するより前に、もう自分の中にあるものなんだと思います。
だから、エリスの口癖のようにルーデウスの名前が出てくるのも、すごく自然なことなんですよね。削っても削っても、最後に残るものはルーデウスしかない。エリスという子の根っこの部分には、ずっとルーデウスがいるんだと思います。

