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『無職転生III』加隈亜衣が見つめたエリスの不器用な成長 ルーデウスへの思いは「恋愛感情だけでは足りない」

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■会社員から声優へ――加隈亜衣の“修行編”と、背中を押してくれた親の存在

――エリスは、不安や迷いを抱えながらも、自分が決めた道に向かって真っすぐ進んでいくキャラクターです。加隈さんご自身にも、当時は勢いで進んだけれど、振り返ると今の自分を作る大きな力になっていた出来事はありますか?

加隈:やっぱり、上京したことは大きかったと思います。私は福岡出身で、地元に住んでいた頃は会社員をしていたんです。でも、転職して「声の仕事をしたい」と思ったんですよね。

もちろん、福岡でも声の仕事は探せばあったのかもしれません。ただ、人生の中で「これをやりたい」と強く思えることが、私にはそんなに多くなかったんです。だからこそ、せっかくそう思えたなら、ちゃんと東京で学んで挑戦したい。そう思って上京しました。

今振り返ると、本当に勢いで動いていたなと思います。「今だ」と思って、そのまま飛び出したような感覚でした。失敗したらどうしようとか、うまくいかなかったら福岡に戻るのかとか、そういうことはあまり考えていなくて。貯金して上京資金が貯まったときに、「行ける。行けるチケットを手に入れたんだ」と思って、そのまま東京に来てしまったんです。

でも、その感覚は少しエリスに似ているのかもしれません。エリスもきっと、ルーデウスと離れている間に彼に何かあったらどうしようとか、誰かほかの人が近づいていたらどうしようとか、そういうことまでは考えていない気がするんです。自分が決めたことに向かって、ただ真っすぐ進んでいる。

もちろん、あとから見れば不安になる要素はいくらでもあります。でも、そのときには見えないからこそ進めることもあるし、ひとつのことしか見えていないときだからこそ出せる熱量もあると思うんです。

私自身、当時は「ものすごい覚悟を持って上京した」という感覚ではありませんでした。ただ、会社員から転職して声優を目指すという選択は、周りから見れば「すごいね」と言われることでもあるし、「怖いよね」とも言われることだったんですよね。今になって振り返ると、「確かに怖いことをしていたんだな」と思います。

でも、そのときの自分には、怖がるより先に「行くんだ」という気持ちがありました。その真っすぐさや、あとから気づく怖さも含めて、今の自分を作ってくれた大きな力だったと思います。


――ちなみに、声優としての「修行編」はいつだったと思いますか?

加隈:アルバイトをしながら養成所に通っていた頃ですね。毎日、どうやって食費を切り詰めるかを考えていましたし、養成所やレッスンのあとに「みんなでご飯に行きます」となったときも、「ここで先生やマネージャーさんのお話を聞けるかもしれない」と思うと、その機会を逃したくなかったんです。

ご飯会が長引いて終電を逃し、始発まで待つこともありました。そのまま一度家に帰って、シャワーだけ浴びて、また次の日のアルバイトへ行く。今振り返るとかなり無茶をしていたなと思いますけど、当時は「少しでも吸収したい」という気持ちのほうが大きかったんだと思います。

最初の頃にいただいたお仕事も、自分にとっては大きな修行でした。ゲームのお仕事だったんですけど、とにかく収録量が膨大で。まだ養成所生で何も分からないまま大量の台本をいただいて、「今日はこれを録ります」と言われて。台本を前にしながら、「これで合っているのかな」と不安な気持ちもありながら現場に臨んでいました。

台本のチェックの仕方も、ゲーム収録ならではの進め方も、最初は分からないことばかりでした。でも、現場では自分で判断しなければいけない場面も多くて、誰かに全部を聞けるわけではない。だから、自分なりに確認しながら、とにかく食らいついていくしかありませんでした。

そういう意味では、本当に“1000本ノック”のような感覚でした。生活面でも、現場でも、毎日何かに鍛えられていた。余裕はなかったけれど、あの時期に必死で積み重ねた時間が、今の自分の土台になっていると思います。


――エリスにとってのルーデウスのように、加隈さんご自身にとって「この人の存在が糧になった」と感じる方はいらっしゃいますか?

加隈:親の存在ですね。私が上京を決めたのは、ちょうど東日本大震災があった年でした。3月に上京する予定で、その前に一度、東京へ部屋を決めに行くことになっていたんです。でも、その飛行機に乗る2日前に震災が起きて。結局、予定は先延ばしになり、部屋も決まらないまま上京することになりました。

きっと親も、ものすごく不安だったと思います。それでも、いよいよ東京へ向かう日、空港まで見送りに来てくれたんです。そのときの、心配そうで、でも私の背中を押そうとしてくれている切ない表情を、今でもふと思い出します。「本当に大丈夫かな」と思いながら、それでも私の決断を尊重して送り出してくれたんだろうなって。

今振り返ると、本当によく送り出してくれたなと思います。不安も心配もあったはずなのに、私がやりたいと思ったことを止めずに見守ってくれて、何かあれば支えてくれた。その親の思いと距離感が、自分にとってすごく大きな支えでした。

もし距離が近すぎたら、きっと甘えすぎてしまったと思うんです。でも、離れた場所からちゃんと見守ってくれていると分かっていたからこそ、「しっかりしなきゃ」「弱音ばかり吐いていられないな」と思えたところがありました。

だから、声のお仕事や雑誌に載せていただけたときに名前が載っているのを報告できることも、自分の中では大きなモチベーションになっていました。少しずつでも頑張っている姿を伝えたい。安心させたい。そう思わせてくれた存在という意味でも、私にとって糧になったのは、やっぱり親だと思います。


――最後に、『無職転生III』の放送開始を楽しみにしているファンのみなさんに向けて、「ここを見てほしい!」というポイントを含めてメッセージをお願いします。

加隈:まずは、「エリスもいるよ!」というところですね(笑)。第3期では、エリスはエリスで必死に頑張っていますし、ルーデウスたちもそれぞれの場所で前に進んでいる。その時間や思いが少しずつ交わっていくところに、『無職転生』ならではの面白さがあると思います。「あのとき、こっちではこんなことが起きていたんだ」と分かっていく仕掛けもいろいろあるので、そういう部分も楽しみにしていただきたいです。

そして、エリスの頑張りに関しては、見るというより、ぜひ“感じて”ほしいです。エリスは、自分の思いを言葉で丁寧に語るタイプではありません。だからこそ、「この表情はどういう意味なんだろう」「この行動にはどんな気持ちが込められているんだろう」と、彼女の表情や行動から受け取ってもらえたらうれしいです。

テレビアニメ『無職転生III ~異世界行ったら本気だす~』ティザービジュアル(C)理不尽な孫の手/MFブックス/「無職転生III」製作委員会
(取材・文・写真:吉野庫之介)

 テレビアニメ『無職転生III ~異世界行ったら本気だす~』の第1・2話は【エリス修行編】と題して特別連続放送。7月4日にTOKYO MXにて20時~21時に放送され、7月5日にBS11、KBS京都、サンテレビでも連続放送。以降、7月12日よりTOKYO MX、BS11にて毎週日曜24時、KBS京都24時45分、サンテレビ25時30分に通常放送。ABEMA、dアニメストアは7月4日より毎話地上波同時・最速先行配信。他配信サービスでも7月8日24時より順次配信開始。

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『無職転生III ~異世界行ったら本気だす~』PV第2弾【エリス修行編】

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