巨匠チャン・イーモウ監督、女優発掘のコツとハリウッド進出について言及
本作にはもう一人、注目すべき女優がいる。娘・丹丹役のチャン・ホエウェンだ。罪の意識にさいなまれながらも、強い思いで家族を見つめる娘を好演している。「彼女は、まだ学生で初めての演技でしたが、撮影に入る前に、何度も演技指導をしました。その結果、とても満足できる演技をしてくれました」。
イーモウ監督と言えば、コン・リーをはじめ、チャン・ツィイーなど新人を発掘し、大女優へ開花させることで定評がある。「よく言われるのですが、コツなんてないんですよ。あるとすればいかに正確に“選ぶか”なんです」。さらに「よく『一目見てこの子だと思った』という監督がいますが、私は信じません。それは監督の不思議な能力を宣伝するための伝説だと思っているんです(笑)」と、世に言われている“風評”をチクリ。
「私は一目見て『この子だ』と思うことはありません。『思い描いているような雰囲気を持っているな』と思うことはありますが、その子が役者になれるか、なれないかは分からない。だから私は何度もテストをして、資質を持っているかどうかを見極めるんです」。そんなイーモウ監督のお目にかかりチャン・ホエウェンは、素晴らしい演技を披露した。
「娯楽映画に傾いている今の中国で、こうした昔のようなスタイルの作品を撮ったことに意味があります。今の中国人は、この映画に描かれている歴史を知らない人が多い。でも私たちには忘れられない出来事だったんです」と語ったイーモウ監督。一方で先日、初めてハリウッドへ進出することも報じられた。「完全に英語のセリフだけの映画です。『Great Wall』という題名。大きな予算で、非常にエンターテインメント色が強い時代劇アクションです。3月に撮り始めて、8月にクランクアップ予定。来年には公開できると思います」と詳細を語ってくれた。(取材・文・写真:磯部正和)
映画『妻への家路』は3月6日より全国公開。