クランクイン!

  • クランクイン!ビデオ
  • クラインイン!コミック
  • クラインイン!トレンド

  • ウェブ全体を検索
  • このサイト内を検索

大森南朋、恩師は「大杉漣さん」 俳優のムダじゃない“ムダな時間”とは

映画

映画『この道』で“無邪気”な北原白秋を演じた大森南朋
映画『この道』で“無邪気”な北原白秋を演じた大森南朋 クランクイン!

 渋い、狂気的な、正義感の強い、謎多き――。これまでありとあらゆる枕詞が付く役を演じてきた大森南朋。その彼が主演映画『この道』で扮する男の枕詞は「無邪気」だ。100年経った今も人々の心を動かす<童謡>を生み出した詩人・北原白秋である。「『こんな46歳のオジサンが無邪気でいいのか』という悲しさと戦っていました」と自虐的に撮影を振り返りながら、どこか楽しそうな笑みを浮かべる大森に、自身の俳優人生について振り返ってもらった。

【写真】大森南朋インタビューフォトギャラリー

 天才詩人の半生が描かれる本作だが、ここでの白秋は隣の奥さんと愛を育んで逮捕されるわ、入水自殺を図るもカニに足を噛まれて断念するわ、詩に音を付けたいと言ってきた音楽家・山田耕筰(AKIRA)とは野菜を投げ合いケンカするわの“ダメ男”。

 「本人が見たら『俺はこんなんじゃない!』って怒られてしまいそう」と笑う大森だが、「資料を拝見した限り、あながち間違いではない部分もあったみたいです。白秋は常に子どものような純粋な心を持ち続けた人なんでしょう。だからこそ心を動かすものが書けたのかな」と分析もする。

 「映画などの芸能が生まれていなかったこの時代の文学者たちは、すごくアカデミックで奔放さを持っていたと思います。一見ノリで書かれたような言葉を、表現という形にアウトプットする。それができるのは天才たる所以(ゆえん)でしょうし、だからこそ評価されてきた。そういう“すごみ”のようなものは感じました」。


 人妻と戯れているときも、水たまりをまたぐときも、山道を歩くときも、詩人仲間と酒を酌み交わすときも…。白秋の中には常に詩がある。詩と演技は、ジャンルは違えども“表現する”という意味では同じ。どんなことも芸につなげる白秋に共感できるか? という問いに、大森は「ムダな時間はムダではないですから」と答えた。

 「同業で酔っ払って言いたいことを言うのは、僕もよくしました。むしろ若いときは仕事がないので飲むしかなくて。あの映画はどうだとか、この仕事はどうだったとか。演技論というほどでもなく、ただちょっと“デキるふう”に批評するだけ。今でもたまにやってますが(笑)」。

 同年代や後輩だけでなく、先輩俳優とそういった“ムダに見えてムダではない時間”を過ごすことも多い。大森は「いい加減なこともいっぱい言われました」と笑いつつ、「でも全てが財産になっている気もします」と目を細める。

 「とにかく『売れなくては』と思っていた20代のころに、『頑張らなくていいんだぜ』『焦るな』と言ってくださる先輩がいて。『アンタは売れてるからでしょ!』なんて心の中ではいつも思っていました(笑)。でもそうやって管を巻いた分だけ頑張れていたんです。いろんな思いや言葉は、結局は全て自分に返ってくる」。

 財産となった“ムダな時間”を共にした俳優の具体例を尋ねると、「いろいろな方がいますけど…」と少しだけ口が重くなった大森が挙げた先輩俳優の名は、2018年2月21日に亡くなった大杉漣さん。


 「間口が広くて、何でも受け入れてくれた。とてもかわいがってもらいましたし、たくさんのことを教わりました。僕がこの映画を撮影している最中に亡くなられてしまったこともあって、白秋の恩師である鉄幹(松重豊が演じる俳人・与謝野鉄幹)に近い存在と言われると、大杉さんが浮かびます」。

 締めの言葉で「なかなかこのようなキャラクターを演じさせていただくことがなかったので、またぜひこういう役で呼んでいただきたい(笑)」と、いたずらっ子っぽく言った顔は、まさしく白秋。全ての“ムダな時間”を芸に生かして歩む生粋の俳優の道のりは、まだまだこの先も続く。(取材・文・写真:松木智慧)

 映画『この道』は2019年1月11日より全国公開。

この記事の写真を見る

関連情報

関連記事

あわせて読みたい


最新ニュース

  • [ADVERTISEMENT]

    Hulu | Disney+ セットプラン
  • [ADVERTISEMENT]

トップへ戻る