木村拓哉、俳優としての自己評価は「そこそこだけど、まだまだ」
東野圭吾の人気小説を実写化した映画『マスカレード・ホテル』で、初の刑事役に挑んだ木村拓哉。ドラマ『ロングバケーション』『HERO』などでタッグを組んだ盟友・鈴木雅之監督のもと、「憧れの東野作品の一員になれたことが何よりもうれしかった」と笑顔を見せる木村が、豪華共演で織り成す最新主演作の舞台裏を振り返るとともに、“俳優・木村拓哉”としての覚悟を語った。
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本作は、累計350万部突破の東野作品屈指の人気小説『マスカレード』シリーズの同名第1作を映画化したミステリー・ドラマ。高級ホテル・コルテシア東京を舞台に、破天荒だが洞察力に優れた警視庁捜査一課の刑事・新田浩介(木村)と、規律とマナーを重んじながらお客さまを第一に考えるフロントクラーク・山岸尚美(長澤まさみ)の“水と油”コンビが、連続殺人事件解決に奔走する姿を痛快に描く。
「初の刑事役といっても、ホテルから1歩も外に出ないですからね」と苦笑いを浮かべる木村。「僕が思い描いていた刑事は、犯人逮捕の証拠となる素材や目撃情報を足で稼ぐ泥臭いイメージ。ところが今回、潜入捜査によって8割がたホテルマンでいなければならない役ですからね。改めて東野さんの“変化球”に驚かされました」。
映画『マスカレード・ホテル』場面写真 (C)2019 映画「マスカレード・ホテル」製作委員会(C)東野圭吾/集英社
実は東野作品への出演を心待ちにしていたという木村は、「原作を読んだときの高揚感がまだ残っていたので、このチャンスを逃す手はない」と二つ返事でオファーを快諾。しかも長澤まさみ、小日向文世、菜々緒、生瀬勝久、松たか子、渡部篤郎らをはじめ、勝地涼&前田敦子の新婚カップルなど錚々たるメンバーが名を連ね、「まるでお祭り騒ぎ。みんないろんな方向から刺激し合い、東野さんが撒いた罠を仕掛けていくドキドキ感があった」と声を弾ませる。
さらに、原作から脚本に変換する全てのプロセスに立ち合った東野の姿勢に感嘆したという木村は、「小説を脚本として短縮したときにあふれ出る部分についても真剣に話し合われていて、最後まで人まかせにしないところはさすがでしたね」と目を見張る。また、「これは東野さんの目論みなのか、鈴木監督の演出なのか、ただ単に日程の問題なのかはわかりませんが、僕が現場に入ったとき、ホテルで働く役の俳優さんたちが全員研修を受けていて、すでに出来上がっていた。自分だけ何もわからない状態で放り込まれ、最初は“いったいどうなっているんだ?”と慌てましたが、“なるほど、ホテルのことは何もわからない役だからこれでいいんだ”と気付くと、この罠(?)も的を射ていて面白かった」と顔をほころばせる。
今回、異色のコンビを組む長澤について木村は、「ここまでがっつり共演するのは初めてですが、仕事に対して一切手を抜かないし、世代は違うけれど、僕と同じモチベーションを持っている方。“こういう人だったらいいな”というイメージをそのまま体現してくれる人でした。僕が演じる新田は曲がったことが嫌いな正義漢。一方、長澤さん演じる山岸もホテルマンとして譲れないポリシーを持っている。お互いにぶつかり合ったり、認め合ったりするシーンが結構あるんですが、監督のOKが出ても、ずっとセッションを続けたいと思えるくらい、演じていてすごく組みやすかったですね」と称賛の言葉を贈った。
映画『マスカレード・ホテル』場面写真 (C)2019 映画「マスカレード・ホテル」製作委員会(C)東野圭吾/集英社
真の姿を仮面で隠し、滞在しては去っていくミステリアスな世界『マスカレード・ホテル』。映画や小説だけでなく、素顔を隠し、無難に人と接する行為は世の常だが、木村はどこまでも自然体、仮面をかぶらず、“むき身”で生きていると強調する。「いろんなパンチが飛んでくるので、当ると痛いです。でも、その痛みを実感しながらも、前に進むしかないんですよね」。俳優として、「そこそこだけど、まだまだ」という自己評価を下した木村。2019年、本作を皮切りに“俳優・木村拓哉”はどこに向かって行くのだろうか。期待の目で、その“まだまだ”を追っていきたい。(取材・文:坂田正樹)
映画『マスカレード・ホテル』は1月18日より全国公開。