Fukase、プロとして10年 走り続けた“表現者”の苦悩と喜び コロナ禍で「音楽を続けるか迷ったことも」
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■メジャーデビューから10年「仕事はモチベーションがすべて」
ミュージシャンと俳優。表現者という意味で、リンクする部分は多かったようだ。「ある役者の方に『演技が下手な人はどういう人だと思いますか?』と質問を投げかけたことがあって。すると『目の奥まで感情が行き届いていない人が、下手だなと思うことはある』という答えでした。僕もよく『何かを伝えたいときは、黒目の奥で歌うこともあるな』と感じるので、それがスッと理解できた」と語る。表現の可能性をさらに突き詰めたことで「早くライブをやりたい。歌の表現ももっと強くなっている気がする」と音楽へのアウトプットに期待する。
「現場がすごく楽しかった」と、音楽ではできない体験をしたことも改めてかみ締める。SEKAI NO OWARIのメジャーデビューから10年が経ったが、Fukaseにとって本作との出会いがまた未来へと向かう大きな力になったという。「10年経ってもまだ、やらなくてはいけないもの、できないものが見えているのは幸せなことだなと思いました。仕事はモチベーションが全て。モチベーションを維持することはいい作品を作るうえで1番大切なことだと思うので、まだ楽しめてるって最高だなと感じています」と喜びをにじませる。
今後の俳優業への可能性については、「初心を残しつつ、おごらず、自分が出ることによって作品にプラスになることがあるなら考えることもできますが…お上りさんにならずに、こういう時こそ慎重にやっていかないといけないかな」と謙虚な気持ちをのぞかせた。
■コロナ禍で「音楽を続けていくのか迷ったことも」
サスペンスフルな物語から、「自分は何者なんだ?」という問いかけが浮かび上がる本作。ファンタジックな世界観でファンを魅了するバンド、SEKAI NO OWARIのボーカルとして唯一無二の存在感を発揮しているFukaseだが、自身のキャラクターについては「“仕事なので”と一線を引くことが苦手。距離感の近い中で、なにかを生み出していくことが得意」と告白する。「公私混同型で、プライベートを切り売りして曲を作っているタイプ。だからこそ、幼なじみとバンドをやっているんだと思います」としみじみ。
また、「何事も真面目にやらないとつまらないと思っている」と胸の内を明かし、「コロナ禍で1度ダウンしかけた時があって…。今年に入ってから少し自分を見失って、このまま音楽を続けていくのかと迷った時期があるんです。でもそこで、いろいろと考え直した。よくスタッフとは『コロナ禍でお酒を飲む時間がたっぷりあるんだけど、仕事をやった後に飲むからおいしいんだよな』と話すんですが、本当にそうだなと。何だって真面目に挑むからこそ、その先にうれしいことを見つけられる」と語る。
しかしその真面目さは、自分を傷つける可能性もある“もろ刃”でもあるという。「真面目というのは自分のためですが、やり切ろう、向き合おうとするとダウンしてしまったり、自分を壊してしまう可能性もある。でもプロとしては“真面目だから倒れてしまった”という状況になるわけにもいかない。真面目さという刃が自分にも向いていると意識しながら、自分との距離感も考えていかないといけないなと思います」とまっすぐな瞳を見せた。
距離感を意識し、人間関係も創作活動も真面目にじっくりと向き合うFukaseの個性がいかんなく表現された映画『キャラクター』では、彼の新たな魅力を再発見できるはずだ。(取材・文:成田おり枝 写真:ヨシダヤスシ)
映画『キャラクター』は、6月11日より公開。