石田ひかり、デビュー35周年 現場でも家庭でも「お母さんという生き物になっている」
◆家庭でも現場でも「もうお母さんという生き物になっている」
私生活では2001年に結婚、2人の娘を持つ石田。仕事と家庭の両立はどのようにしているのだろう。「今でもできてないです。娘たちも成長してきて、巣立つ日も近付いてきたので、この悩みもようやく終わるのかなと思いますけども…。どちらも中途半端だって感じが自分の中にあります」と意外な答えが。
本作でのミセス・ダーリングや『監察医 朝顔』、さらには10月15日公開予定の映画『かそけきサンカヨウ』で志田彩良の母を演じるなど、母親役づいている石田。役に実生活の反映があったりするのだろうか?「う~ん。娘ではないので、なかなかそれはできないんですけど、でも自然に、やっぱり私はもうお母さんという生き物になっているんだと思います。普段から」とほほ笑む。「現場でも、困っている子や若い子が恥ずかしそうにしてたり緊張していたりすると、やっぱり声をかけてあげたくなるし、お腹すいてない?とか声をかけたり。昨日もアクション練習をしている華ちゃんに、“動画撮ってあげようか?”って言ったら、裕翔くんが『お母さんみたいですね』って(笑)。動きが体も心もお母さんなんだと思います」とにっこり。
「オンとオフの切り替えも最近は作品によりますね。昔は現場離れたらすぐスイッチが切り替わりましたけど、子どもを産んでからは無理ですね。家庭のことは頭から抜けないです。現場でも、あれやって、これやっておいてってスマホを使って遠隔操作です(笑)」と母の顔を見せる。「家に帰ると台本を開く時間はほぼないですね。これは私の要領の悪さなんですけど…。なので移動時間が私にとってはとっても大事です」。
◆人生の“夏”を終え、迎える実りの秋に感じる楽しみと怖さ
目の前で凛(りん)とした笑顔を見せる姿からは想像ができないが、来年50歳を迎えるという。「半世紀生きているんだって思うと、ちょっとびっくりするんですけど…。コロナでいったん立ち止まっていろんなことを考えたときに、14歳くらいで仕事を始めて、何の資格も持ってないし、ほかにできることがなにもないんですよね。現場がなければただの人なんだなっていうのをいやというほど知らされて…」と心境を吐露。
「人生100年として、25年ずつ春夏秋冬で区切っていくと、今は夏までが終わった段階。これからは実りの秋。この50年がどういうふうにして実っていくだろう、どういうふうに熟成して晩年を迎えていくのだろうって、客観的に楽しみでもあり、なんにも実らなかったらどうしようっていう怖さもあります。とはいえ、生きてきたのは自分自身なので、その結果が少しずつ出て行くんだなって受け止めるしかないかなって」。
「海外の方とお仕事をして、世界って広いんだな、人生っていろんなことができるんだなって実感しているところなんです。娘たちを見ていると、これから可能性しかない。いい人生を送ってほしいなって若い人たちにもエールを送るというか、本当に中間地点にいるのかなって思います」としみじみと語る。
これからの活動について尋ねる質問に「やりたいことは次の事っていう気持ちです、いつも」と軽やかに笑顔を見せた石田。デビュー35年を迎えても、力まず自然体な好奇心と向上心で、女優として1人の女性として、ますます輝き続けてくれるに違いない。(取材・文:編集部 写真:高野広美)
DISCOVER WORLD THEATRE vol.11『ウェンディ&ピーターパン』は、東京・Bunkamuraオーチャードホールにて8月13日~9月5日上演。
映画『かそけきサンカヨウ』は10月15日より公開予定。