山寺宏一「追いつけるわけがない」 偉大な先輩への思いと“2代目”の葛藤
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アニメ化50年の節目を迎える『ルパン三世』の新作テレビシリーズ『ルパン三世 PART6』がいよいよ放送を迎える。先日、アニメシリーズ開始から次元大介の声を演じてきた声優の小林清志が勇退し、大塚明夫に引き継がれることが発表されたが、同じく10年前に納谷悟朗さんから銭形警部の声を引き継いだのは声優の山寺宏一だ。その当時を回顧し「それはもちろん納谷さんに追いつけるわけがないですし、オーディションを受けるのを辞めようかという選択肢もあった」と胸の内を明かした山寺が、先代への敬意と2代目としての葛藤、そして覚悟を語った。
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■銭形警部役を引き継いで10年 絶対的なキャラクターを演じる葛藤
山寺が『ルパン三世』シリーズに銭形警部役として参戦したのは、2011年のテレビスペシャル『ルパン三世 血の刻印 〜永遠のMermaid〜』から。今年で10年という節目を迎えるが「テレビシリーズやスペシャル、劇場版といろいろな形で参加させていただきましたが、いまだに『本当に2代目を仰せつかったのかな…』という気持ちなんです。アニメにおける銭形警部というキャラクターは、偉大なる先輩の納谷悟朗さんが作り上げたもので、いつまで経ってもやはり“引き継いだ”という気持ちがあり、プレッシャーでもあるんです」と率直な思いを述べる。
先輩へのリスペクトを常に思いつつも、引き継いだからには、しっかりと役を全うしなければいけないという責任感もある。「通常の作品でキャラクターを演じる際は、その人物がどういう人間で、台本にはどんな思いがつづられているのか、何を表現するのか…ということをくみ取ろうと努力します。でも銭形に関しては、すでに多くの人の心のなかに大きな存在として住み着いているキャラクターなので、自分なりの銭形を作っていかなければいけないと思いつつも、銭形という人物から逸脱してはいけない。役を引き継いだ僕以外の方々も、そういった葛藤は常にあったと思います」。
10年という歳月が経過しても、こうした葛藤はなくならないという。「今回『PART6』の収録の時、あまり銭形にとらわれてはいけないと、その時の感情でスッと自分のなかから出たものを表現したら、音響監督さんから『今のは銭形ではなく山寺さんでしたね』と指摘されたんです。演技としては良い表現なのかなと思っても、そこには銭形という絶対的な存在があるわけで、やっぱりそうだよなって思ってしまいました(笑)」。
■次元大介役・小林清志の勇退、引き継ぐ“戦友”大塚明夫への思い
長寿アニメでは必ずぶち当たる声優の交代問題。山寺も「絵が変わらない限り、キャラクターは年を取らないですから」と語ると「ある程度は仕方ないにしても、なるべく声はキープしたいなという思いはあります」と胸の内を明かす。
『ルパン三世』でも、納谷さんから山寺への交代をはじめ、各キャラクターでバトンタッチが行われている。「山田康雄さんから栗田貫一さんに交代された時も大変だったと思います。よく栗田さんは『もともと俺はモノマネだから』とおっしゃっていますが、そんなレベルではなく、真摯(しんし)に役に向き合い、心で演じているのを目の当たりにして『本当にすごいな』と感じています。栗田さんからは、いろいろな思いを僕らは教わっているので、それは本当に助けになりました」。
そして本作で、テレビアニメスタートから50年にわたって次元大介の声を担当してきた小林が勇退、大塚に引き継がれることが発表された。これに山寺は「大塚さんは、僕よりちょっと年上の先輩ですが、『戦友だな』と言いながらずっとやって来た大好きな兄貴分。公私共に仲良くしていただき、役者としても尊敬している方。僕が納谷さんから交代した時も、いろいろ話をして気持ちを知ってもらっているので、一緒に頑張っていければ」とエールを送る。
小林に対しては「清志さんは僕が以前いた事務所の先輩でもあり、ずっとお世話になってきた方です。とにかく次元といえば清志さん。清志さんといえば次元というほど唯一無二の存在。僕が言えることではないですが、本当にものすごい存在の方です」と敬意を表する。