山寺宏一「追いつけるわけがない」 偉大な先輩への思いと“2代目”の葛藤
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■オーディション辞退も考えた「僕だって銭形は納谷さんが1番いいと思っています」
今回の交代劇、山寺には大塚のプレッシャーが「痛いほど分かる」とおもんぱかる。「多分今回の報道を受けて『変わってほしくない』という思いの人も多いと思います」と切り出すと「僕が納谷さんから交代した時も『声優が変わったら、もうそのキャラクターじゃない!』という意見は聞きました」と当時を振り返る。
山寺自身、『ルパン三世』のテレビシリーズがスタートした時はちょうど10歳で、夢中になってアニメを見ていたという。「こういった僕ら世代からすると『声優を交代させてまで続ける意味があるのか』とか『そのまま終了してしまえばいいじゃないか』という意見が出るのも分かるんです」と、こうした声に対して理解を示す。
山寺も「僕だって、銭形は納谷さんが1番いいと思っていますから」と語ると「オーディションを受けるのを辞めようかなという選択肢も頭の中にはありました。でも僕が断っても、代わりに誰かが銭形の声を担当して、『ルパン三世』は放送されるはず。それだったら、僕自身が大好きな作品に入って、そういった否定的な声を少しでも『やってくれてよかった』と感じてもらえるように頑張ろうという気持ちになったんです」と前向きに捉えて臨んだという。
■還暦、そして結婚 長く続けるために「1本1本全てオーディションだと思って」
強い思いで臨んだ『ルパン三世 PART6』。奇想天外な脚本をベースに、キャラクターたちがこれまで以上に躍動し、王道でありつつも斬新なミステリーが展開する。銭形もいつも以上にルパン逮捕に執念を燃やし、作品に彩りを添える。
そんなパワフルな銭形を演じる山寺も今年60歳の還暦を迎えたが、銭形同様、躍動感がみなぎっている。「もうそれは役のおかげです」と笑うと「個人的なことですが、結婚もしたのでしっかり頑張らないと。これまでは、なんとなく頑張ってきたらなんとなくできていたことも多かったのですが、発声のことも含めて年齢を重ねると衰えが出てくるので、体力を付けて、少なくとも声はキープしていきたいです」と抱負を述べる。
もうひとつ山寺が大切にしているのが“感性”だ。「感性が鈍るのが1番怖いことだと思うんです」と危機感を募らせ、「今はやりのことに敏感になるべきということではないのですが、何が面白いことなのか…というのは、自分の中でしっかりアンテナを張っていきたいです。こびるところはこびて」と笑う。
今回、次元大介役は大塚にバトンタッチしたものの、小林は現在88歳でも現役。その他、野沢雅子ら声優界には80代になっても一線で活躍しているレジェントが多数いる。「僕はそんな方々を目の当たりにしています。先輩たちを見ていると、僕も長くやりたいと心から思います。声優は、自分以外の多くの人が作ってくれたキャラクターによって成り立つ仕事なので、これからも1本1本が全てオーディションだと思って、努力は怠らないようにしていきたいです」と熱い思いを語った。(取材・文:磯部正和 写真:高野広美)
テレビアニメ『ルパン三世 PART6』は、日本テレビ系にて10月より放送。日本テレビでは10月9日24時55分より放送開始。