人間国宝・野村万作が到達した芸の境地とは 犬童一心監督最新作『六つの顔』8.22公開 予告&場面写真一挙解禁

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芸歴90年を超える人間国宝の狂言師・野村万作を追った、犬童一心監督によるドキュメンタリー映画『六つの顔』が、8月22日より公開されることが決定。併せて、俳優のオダギリジョーがナレーションを務めた予告編、ビジュアル、場面写真が一挙解禁された。
【動画】人間国宝・野村万作を映すドキュメンタリー『六つの顔』予告編
650年以上にわたり、生きとし生ける者の喜怒哀楽を笑いとともに表現し、人々の心を魅了し続けてきた「狂言」。 その第一人者であり、今なお現役で舞台に立ち続ける人間国宝の狂言師・野村万作は、3歳で初舞台を踏んでから、長きにわたり狂言と向き合い、2023年に文化勲章を受章した。今年6月22日に94歳を迎える。
本作では、受章記念公演が行われた特別な1日に寄り添いながら、万作の過去と現在の姿を浮かび上がらせる。万作が公演で演じるのは、近年、ライフワークとして取り組み磨き上げてきた、夫婦愛を描く珠玉の狂言「川上(※)」。映像には、物語の舞台である奈良の川上村・金剛寺の荘厳な原風景も贅沢に収録。万作が長年追求してきた世界観を、その至芸とともにスクリーンに刻む。
さらに、90年を超える芸歴のなかで先達たちから受け取り繋いできた想いや、今もなお、高みを目指して芸を追求し続ける万作の言葉を収めた貴重なインタビューも交え、息子・野村萬斎や孫・野村裕基をはじめとする次世代の狂言師と共に舞台に立つ模様を臨場感たっぷりに映し出す。
監督を務めるのは、『ジョゼと虎と魚たち』、『メゾン・ド・ヒミコ』、『のぼうの城』など数々の名作を手掛け、近年は田中泯を追ったドキュメンタリー『名付けようのない踊り』でも高い評価を受ける犬童一心。狂言に造詣の深い監督ならではの、大胆かつ繊細なアプローチで万作の芸境に迫る。
万作が語る“過去”と“現在”をアニメーションで繋ぐのは、『頭山』で米アカデミー賞(R)にノミネートされた山村浩二。ナレーションを俳優のオダギリジョーが務めるなど、豪華な顔ぶれが集結した。監修は野村万作、野村萬斎。モノクロームで映し出される現在、アニメーションで表現される万作の過去に思い浮かぶ「六つの顔」、そしてカラーで立ち現れる狂言「川上」の研ぎ澄まされた美しさ。豊かな映像表現で織りなす、至高のドキュメンタリー映画が誕生した。
予告編は、本編同様、オダギリジョーがナレーションを担当。万作が3歳で踏んだ初舞台の記憶とともに現れる、「猿」の面のアニメーションから幕を開ける。その後、90年にわたり狂言と向き合ってきた万作が過去を振り返る中で心に浮かぶ「六つの顔」にフォーカス。さらに、息子の野村萬斎や、孫の野村裕基のインタビューも交え、現在の万作の姿を追う。狂言への想いを語りながら、「93歳の私が、今思う『川上』を演じる」という言葉とともに、舞台に立つ万作。その芸境とは?スクリーンでしか見ることのできない、特別な上演に期待が高まる予告に仕上がった。
ビジュアルは、狂言「川上」の上演直前に、装束を身につけて集中する万作の貴重な姿を捉えたもの。研ぎ澄まされた表情と、一つの道を極めた万作にしか出せない佇まいに目を奪われる。
本作について、野村万作は「芸歴90年を超えた私がいま演じる『川上』を、現在はもとより未来の観客にも観て頂きたいという思いでこのたびの映画化を思い立ちました。狂言の笑いの質は美しい『型』によって支えられています。狂言は美しくあらねばならない、と長年思ってきましたので、犬童一心監督の狂言への愛によって、映画のスクリーンがとても美しいものに仕上がったことを有難く思っております」とコメント。
野村萬斎は「父と、『川上』の盲目の男の生き様に、何かオーバーラップするものを感じて頂けるのではないでしょうか。古典芸能・狂言を伝える一家に育った我々は、『いま』という瞬間を、点ではなく、伝統という線の中で生きています。ただ、それは我々ばかりのことではありません。この映画を通して、人間誰しも広く歴史を受継ぐ存在であり、より良い未来のために生きていく、その中でかつ自分個人の生を全うする、という大きな生き様を感じ取って頂ければ幸いです」とメッセージ。
野村裕基は「映画『六つの顔』を通して、自分と同じ若い世代の方にも、様々な人の様々な人生の中の一つとして、こんな人もいるのだな、と祖父の生き様をご覧いただけたらと思います。激動の時代を生き抜いてきた人の生き様に、昔を踏まえた上で、今をどのように生きるべきか、という解が込められた映画だと感じました」とコメント。
犬童監督は「『川上』へのこだわりについてうかがったとき、今演じるのであれば『仏の教えに、夫婦の愛が克った』そこを伝えたいとおっしゃった。人間を信じることが今こそ必要だという大きなテーマを抱えて挑戦しようとされているのだ。93歳にしてまだまだ続く芸と世界への希求にとても感動した。17歳から作り続けてきた映画、今回万作先生から私の映画を監督してもらえないかという提案は、最高の名誉、ご褒美だった」と語っている。
なお、本作のムビチケ前売券(オンライン)は、6月12日より発売開始。
映画『六つの顔』は、8月22日よりシネスイッチ銀座、テアトル新宿、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開。
※盲目の男が、願いを叶えてくれるという「川上」の地蔵に参詣し、その甲斐あって視力を得る。しかし、男の夢に現れた地蔵は視力と引き換えに「妻と離別せよ」という過酷なお告げを残していたのだった。視力か、尽くしてくれた妻か、男は究極の選択を迫られる。和泉流のみに伝承されるこの演目は、笑いを本旨とする狂言においてはシリアスな異色作。夫婦愛と宿命を深く問う物語は、現代に通じるテーマをはらむ。
出演者、監督のコメント全文は以下の通り。