『ベニスに死す』の“世界で一番美しい少年”ビョルン・アンドレセンさん死去 70歳
巨匠ルキノ・ヴィスコンティ監督作『ベニスに死す』(1971)に出演し、“世界で一番美しい少年”とうたわれたウェーデンの俳優でピアニスト、音楽家でもあったビョルン・アンドレセンさんが亡くなった。70歳だった。
【写真】「ビョルン・アンドレセン」フォトギャラリー
米The Hollywood Reporterによると、彼のドキュメンタリー映画『世界で一番美しい少年』(2021)を手掛けたクリスティアン・ペトリ監督がスウェーデン紙Dagens Nyheterに明かしたそうだ。死因については明らかにされていない。
1955年にスウェーデン・ストックホルムで生まれたビョルンさんは、15歳で、名匠ルキノ・ヴィスコンティ監督に見いだされ、『ベニスに死す』でダーク・ボガード演じる老音楽家を虜にする美少年タジオを演じ、注目を集めた。ヴィスコンティ監督はプレミアで、彼を「世界一の美少年」と称賛。日本でもCM出演など芸能活動も行い、カルチャーに大きな影響を及ぼした。
しかし、「世界一の美少年」の名は、公私にわたり、彼に影響を与えることになる。2003年に受けたGuardian紙のインタビューでは、「檻に入れられた珍獣のような気持ちだった」とコメント。また2021年にも同紙に対し、『ベニスに死す』が「私の人生を酷く狂わせた」と語っていた。
彼はまた、元妻で詩人のスザンナ・ローマンとの間に生まれた息子を乳幼児突然死症候群で亡くした後、深刻な鬱状態とアルコール依存症に悩まされるも、俳優業のほか、音楽家としても活動を続け、2019年にはアリ・アスター監督の『ミッドサマー』にも出演し、注目を集めた。2021年に公開されたドキュメンタリー『世界で一番美しい少年』では、『ベニスに死す』の裏側と、彼の栄光と破滅、心の再生を描き、サンダンス映画祭でワールド・シネマ部門ドキュメンタリー審査員大賞を獲得した。なお、ペトリ監督はDagens Nyheter紙に対し、彼を「勇敢な人だった」と称えた。

