ヴェネチア国際映画祭で途中退場者続出 発禁書を映画化『異端の鳥』初夏公開

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昨年のヴェネチア国際映画祭において、ホアキン・フェニックス主演の『ジョーカー』以上に話題を集めた映画『The Painted Bird(原題)』が、邦題を『異端の鳥』として初夏に公開されることが決定した。
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原作は、自身もホロコーストの生き残りであるポーランドの作家、イェジー・コシンスキが1965年に発表した彼の代表作で、本国では発禁書となり、作家自身も後に謎の自殺を遂げた“いわくつきの傑作”『ペインティッド・バード(初版邦題:異端の鳥)』。第二次大戦中、ナチスのホロコーストから逃れるために、たった一人で田舎に疎開した少年が、差別と迫害に抗いながら強く生き抜く姿と、異物である少年を徹底的に攻撃する“普通の人々”を赤裸々に描く。
ヴェネチア国際映画祭のコンペティション部門で上映されると、少年の置かれた過酷な状況が賛否を呼び、途中退場者が続出。しかし、同時に10分間のスタンディングオベーションを受け、ユニセフ賞を受賞し、同映画祭屈指の話題作となった。さらに、その後も多くの批評家から絶賛を浴び、今年のアカデミー賞国際長編映画賞のチェコ代表にも選ばれている。
東欧のどこか。ホロコーストを逃れて疎開した少年は、預かり先である一人暮らしの叔母が病死した上に火事で叔母の家が消失したことで、身寄りをなくし1人で旅に出ることになってしまう。行く先々で彼を異物とみなす周囲の人間たちの酷い仕打ちに遭いながらも、彼はなんとか生き延びようと必死でもがき続ける―。
キャストには、新人のペトル・コラールが、迫害を生き抜くうちに徐々に心を失っていく少年を体当たりで演じ切り、そのほか、ステラン・スカルスガルド、ハーヴェイ・カイテル、ジュリアン・サンズ、バリー・ペッパー、ウド・キアなど、いぶし銀の名優たちが顔をそろえる。
メガホンをとったのは、チェコ出身のヴァーツラフ・マルホウル。マルホウル監督は、3年をかけて17のバージョンのシナリオを用意し、資金調達に4年をかけ、主演のペトルが成長していく様を描く為、撮影に2年を費やした。撮影監督を務めたのは、映画『コーリャ 愛のプラハ』でアカデミー賞外国語映画賞を受賞したチェコ映画界の巨匠ウラジミール・スムットニー。シネスコ、モノクロームの圧倒的な映像美で、映画的な驚異と奇跡に満ちた作品に仕上げた。
なお、舞台となる国や場所を特定されないように、本作で使用される言語として、人工言語「スラヴィック・エスペラント語」が採用されている。
映画『異端の鳥』は初夏に全国公開。