政府がひた隠す巨大な闇を命がけで暴く オスカーノミネート作『コレクティブ』日本版予告
本年度アカデミー賞で国際長編映画賞、長編ドキュメンタリー賞の2部門にノミネートされたほか、世界各国の映画祭で32もの賞を獲得したルーマニア映画『コレクティブ 国家の嘘(うそ)』より、日本版予告編が解禁された。
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本作は、命よりも利益や効率が優先された果てに起こった国家を揺るがす巨大医療汚職事件の闇と、それに立ち向かう市民やジャーナリストたちを追ったドキュメンタリー映画。
2015年10月、ルーマニア・ブカレストのクラブ“コレクティブ”でライブ中に火災が発生。27名の死者と180名の負傷者を出す大惨事となったが、一命を取り留めたはずの入院患者が複数の病院で次々に死亡、最終的には死者数が64名にまで膨れ上がった。事件を不審に思い調査を始めたスポーツ紙「ガゼタ・スポルトゥリロル」の編集長は、内部告発者からの情報提供により衝撃の事実に行き着く。
その事件の背景には、莫大な利益を手にする製薬会社と、彼らと黒いつながりを持った病院経営者、そして政府関係者との巨大な癒着が隠されていた。真実に近づくたび、増していく命の危険。それでも記者たちは真相を暴こうと進み続ける。一方、報道を目にした市民たちの怒りは頂点に達し、内閣はついに辞職へと追いやられ、正義感あふれる大臣が誕生する。彼は、腐敗にまみれたシステムを変えようと奮闘するが…。
日本版予告編は、一命を取り留めたはずの入院患者が病院で次々と死亡した原因が、内部告発により火災時のやけどではなく感染症であることが明らかとなる決定的瞬間や、記者が諜報部から「家族もいるだろ、気をつけろ」と脅迫されたことを明かす姿、公文書の偽造疑惑に対してまともに答えようとしない大臣に対し記者達が懸命に食い下がる様子など、スリリングな場面が次々と展開していく。
映像の後半からは、新たに誕生した正義感あふれる保健省大臣が、事件に関わる政策を管轄する大臣として奮闘する姿にも密着。腐敗の中枢でもある政府の中から事件に立ち向かう彼は「大臣になって知った。何もかも腐りきってる」と苦悩の表情で明かす。それぞれ異なる立場から事件に関わる者たちが戦う姿をつぶさに捉え、これまでのドキュメンタリー映画の常識を覆すような“深度”で事件に肉薄していく本作の迫力が伝わる映像となっている。
本作で撮影も担当したアレクサンダー・ナナウ監督は、本作におけるほぼ全てのシーンの撮影を一人で敢行。取材活動の妨害とも取れる言葉を投げかけられた記者とは違い、監督自身が身の危険を感じることはなかったものの、撮影中は自身も諜報機関により電話を盗聴されていたことを把握していたという。このため、本作の製作中はフッテージ素材を厳重に管理しながらいくつもコピーをしたり、時には素材をルーマニア国外に運び出すなど、素材とプロジェクトを守る態勢で臨んでいたことを明かしている。
そんなナナウ監督は、撮影する上で心掛けていることとして「観客の皆さんが、これは誰かが撮影していることを感じさせないほどに、キャラクターと直接的な繋がりを持てるようにと考えています。映画でも小説でも素晴らしいストーリーテリングというのは、ストーリーの中にいることを忘れてしまうものです。そういう風にすることが私の仕事であると思っています」と語っている。
映画『コレクティブ 国家の嘘』は10月2日より全国公開。