解体される団地で少年が見た思い出と光― 『GAGARINE/ガガーリン』予告&ポスター
第73回カンヌ国際映画祭オフィシャルセレクション初監督作部門に選出された青春映画『GAGARINE/ガガーリン』が、2022年2月25日より公開されることが決定。日本版予告映像とポスターが解禁された。
【写真】『GAGARINE/ガガーリン』予告
舞台はパリ郊外に実在する、「地球は青かった」の言葉で有名な宇宙飛行士ガガーリンに由来する名前を持つ赤レンガの大規模公営住宅“ガガーリン”。この場所で育った16歳の主人公ユーリは部屋の天体望遠鏡から空を観察し、宇宙飛行士になることを夢見ていた。しかし老朽化と2024年パリ五輪の為に取り壊す計画が持ち上がった団地では、次々と住人が退去。ユーリは自分を置いていった母との大切な思い出が詰まったこの場所を守るため、友だちのフサームとディアナと一緒に取り壊しを阻止しようと動き出す―。
主演は、本作で見出されたアルセニ・バティリ。新人らしからぬ高い演技力で主人公の揺れる心情を体現し、第17回セビリヤ・ヨーロッパ映画祭ほか各国の映画祭にて主演男優賞を受賞した。共演は、『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』の若手女優リナ・クードリ。レオス・カラックス作品の常連ドニ・ラヴァンも特別出演している。
日本版予告映像は、ユーリが広場で仲間達と踊ったり、皆既月食を楽しんだりと、ガガーリン団地での彼の日常を捉えるシーンから始まる。やがて時は経ち、建物の老朽化のためにガガーリン団地の解体が決定。それまでの幸せな日々に少しずつ綻びが見え始める。そんな中ユーリは、「アメリカに行きたい」「自由で自分らしくいれる国だから」と想いを語る友人ディアナから「夢はある?」と問われる。
そしてユーリは、自分の<夢>を実現するため、彼なりの方法で、団地解体の阻止に向けて動き出す。それまで帰らぬ母を待つばかりだった彼が、壊れゆく団地の中で自分の心に正直になり、プラネタリウムを作り上げアパートの中をバイクで駆け巡る。最後は「消えゆく団地で僕が見つけた思い出と光」というナレーションに続き、団地の窓から謎の閃光が放たれる印象的な場面、「募る思いが、輝き出す。」というキーフレーズが映し出されて終了。エモーショナルな青春ストーリーを予感させる映像となっている。
ポスターは、宇宙飛行士を夢見るユーリが憧れの<月>を見上げる姿を描いたもの。背景は、映画本編でも多用されている、朝と夜の間に一瞬だけ訪れる“マジックアワー”と呼ばれる幻想的な美しいグラデーションの空が広がっており、彼の募る思いが輝きを増すようなビジュアルとなっている。
監督は、本作が長編デビューとなるファニー・リアタール&ジェレミー・トルイユの男女2人組。2人は舞台となる団地について、「<ガガーリン>団地は貧しい人々が住む極地的なエリアだ。メディアはこの地域の治安の悪さばかりを取り上げる。フランスでは、本作のような映画を<Film du banilieue>(郊外の映画)と呼び、その映画に描かれているもの全てについて、ある種の新しいジャンルであるかのように言う。しかし、それは違うと思っている。そこには様々な語られるべきストーリーがある。たまたま貧しい古い建物が立ち並ぶエリアに住んでいるだけなのだ」と語る。
続けて「団地に住む子供たちの中には、外界と交流をしたがらない子もいるが、本作の主人公のユーリにとって、団地は宇宙船で、宇宙船から外に出れば自由になれる、息が出来ると思っている、ただ団地は彼の母のお腹の中と同じ。なかなか外に出る勇気が持てない。(団地を)そういう存在として描いた」と説明。特定の地域に住む子供たちがステレオタイプな描かれ方をされることに疑問を抱いた彼らは、解体前のガガーリン団地で実際に撮影を敢行。ノスタルジックで幻想的な映像美の中に、繊細な若者の心の機微を映し出すことに成功している。
映画『GAGARINE/ガガーリン』は、2022年2月25日より全国公開。