自国では上映中止―イラン発衝撃の冤罪サスペンス『白い牛のバラッド』予告解禁
第71回ベルリン国際映画祭にて金熊賞と観客賞にノミネートされた映画『白い牛のバラッド』より、30秒予告とメインビジュアルが解禁された。
【動画】男はなぜ、私の前に現れたのか――『白い牛のバラッド』予告
本作は、死刑執行数が世界2位となる国イランの懲罰的な法制度を背景に、シングルマザーの生きづらさ、理不尽に立ち向かう女性の姿を巧みに描き出した衝撃の冤罪サスペンス。自国のタブーに切り込んだベタシュ・サナイハ監督とマリヤム・モガッダム監督は、批評家からアスガー・ファルハディ監督やモハマド・ラスロフ監督に並ぶ才能と賞賛され、世界中の映画祭で数々の賞を受賞した。本国イランでは、2020年2月のファジル国際映画祭で3回上映されて以降、政府の検閲により劇場公開の許可が下りず、2年近く上映されていないという。
テヘランの牛乳工場に勤めるミナ(マリヤム・モガッダム)は、夫のババクを殺人罪で死刑に処されたシングルマザー。刑の執行から1年が経とうとしている今も深い喪失感に囚われている彼女は、聴覚障害で口のきけない娘ビタの存在を心のよりどころにしていた。
ある日、裁判所に呼び出されたミナは、別の人物が真犯人だと知らされショックのあまり泣き崩れる。理不尽な現実を受け入れられず、謝罪を求めて繰り返し裁判所に足を運ぶが、夫に死刑を宣告した担当判事に会うことさえ叶わなかった。するとミナのもとに夫の友人を名乗る中年男性レザ(アリレザ・サニファル)が訪ねてくる。ミナは親切な彼に心を開いていくが、ふたりを結びつける“ある秘密”には気づいていなかった…。
30秒予告は、「真犯人が見つかりました」と告げられ、悲嘆にくれるミナの姿から始まる。そんなミナとろうあの娘ビタの元に、「ご主人に借りた金を返しに来ました」と語る謎の男レザが現れ、悲しみに暮れていた親子は親切な彼に次第に心を開いていく。
しかしその後水浸しの部屋に佇むレザが映し出されると、不穏な空気に一変。「愛する人を冤罪で失った時、あなたならどうしますか」という究極の問いかけとともに、「死刑」「犠牲」「過ち」の言葉が、二人を捉えたシーンに挟み込まれていく。果たしてこの男は一体何者なのか。緊迫感溢れる展開に感情が揺さぶられ、最後にタイトルと共に登場する白い牛が強く印象に残る予告となっている。
メインビジュアルは、頬を伝う涙が印象的なミナの横顔を大きく切り取ったもの。その下に描かれた白い牛には、こぼれたミルクが重なっている。顔の横には「男はなぜ、私の前に現れたのか」というコピーが添えられ、男と女のサスペンスフルな展開を予感させるビジュアルに仕上がっている。
映画『白い牛のバラッド』は、2月18日より全国公開。