中村芝翫、和装で届ける誰も観たことのない『リア王』に意気込み!/舞台『リア王』稽古場レポート
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歌舞伎俳優の中村芝翫が、演出家・井上尊晶とタッグを組んだシェイクスピア劇シリーズの第三弾『リア王』が9月より東京・新橋演舞場にて上演される。“戦火で爆撃を受け廃墟となった演舞場が舞台となる”という、開場101年目を迎えた新橋演舞場ならではの壮大なスケール感で立ち上げていくという本作。メディア向けに、稽古の一部が公開されたので、その模様をレポートする。
【写真】中村芝翫がリア王を熱演! 舞台『リア王』公開稽古の様子
◆着物に袴、打掛――和の衣装で届ける『リア王』
到着したタイミングは休憩中。稽古場は和やかな雰囲気で満たされており、キャスト同士の会話には時折笑い声も混じっている。誰かがセリフを諳んじて自主練習を始めると、その場面のキャストがスッと入ってきて、そのままセリフのやり取りが始まるような場面もあり、キャスト同士のコミュニケーションが充実していることがうかがえた。
そして、驚かされたのはその衣装。リア王を演じる中村芝翫は着物に袴、長女ゴネリル役の松下由樹、次女リーガン役の朝月希和、末娘コーディリア役の井上小百合はそれぞれ、赤、緑、白の打掛をまとっており、そのほかのキャストも浴衣という、和装での稽古だった。本番でも和の衣装で上演されるとのこと、一体どのような『リア王』になるのか、その点でも期待が高まる。
公開されたシーンは2つ。まずは、老境のリア王が国土を3人の娘に分け与えようとする場面だ。ゴネリルやリーガンが言葉巧みな美辞麗句をリア王に向けて並べるのに対し、コーディリアは嘘のつけない素直さゆえに、その真意を伝えられず、父親を激高させてしまう。長女次女の甘言に有頂天になっている表情から一転、三女の言葉で一気に怒りの沸点が頂点に達する芝翫の変貌ぶりは、ド迫力。歌舞伎で培ったよく響く声での怒号には、圧倒されてしまった。
また、松下と朝月の2人による“耄碌した父への呆れ”を愚痴のように言い合う場面も見ものだ。老いた親への敬意が薄れてしまう子の心情は、現代でも近しいところがありそうだ。一方で、井上演じるコーディリアの無垢さもいじらしく見える。役柄のコントラストがくっきりと見えるようだった。
親子関係で言えば、庶子エドマンド(大野拓朗)が父グロスター伯爵(村田雄浩)の裏で腹に静かに滾らせる野心も素晴らしかった。独白シーンでの想いを露わにした時の表情と、父の前で見せる表情との変化にもぜひ注目していただきたい。
もう一つの場面は、嵐の荒野を失意のリアと道化(小倉久寛)、ケント伯爵(二反田雅澄)が進む場面。好き勝手に振る舞うリアに、付き従う道化や伯爵は困惑気味。吹きすさぶ風雨に晒されたリアの前に現れたのは、狂人となってしまったエドガー(三浦涼介)だった。この場面では、まさに狂気じみた三浦の演技力が場を支配する。おびえるように、だが荒ぶるように全身を強張らせている姿には、誰しもが目を離せなくなるのではないだろうか。そんな三浦を、包み込むように慈しむ芝翫の滲むような優しさにも魅了されてしまった。
稽古場で和装のキャストらが目に飛び込んできたときは、どんな異質なシェイクスピアが立ち上がるのだろうかと想像した。しかし、2つの場面を見て感じたことは、いまだかつて誰も観たことのない『リア王』になるであろうという予感と、歪さのない、むしろ調和を感じるほどの違和感のないお芝居だった。この試みが、新橋演舞場の舞台でどのように立ち上がるのか、大いに期待したい。
◆襲名10年の節目での大作挑戦に特別な思い
【公演概要】
舞台『リア王』
9月6日~22日:東京・新橋演舞場
◆作
W.シェイクスピア
◆訳
石井美樹子(河出書房新社『真訳 シェイクスピア四大悲劇』収録)
◆演出
井上尊晶
◆出演
リア王:中村芝翫
ゴネリル:松下由樹
エドガー:三浦涼介
リーガン:朝月希和
コーディリア:井上小百合
エドマンド:大野拓朗
オズワルド:大堀こういち
コーンウォール公爵:駒井健介
オールバニ―公爵:中村松江
ケント伯爵:二反田雅澄
道化 :小倉久寛
グロスター伯爵:村田雄浩
【公式サイト】https://www.shochiku.co.jp/play/schedules/detail/202609_enbujo/
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