咲妃みゆ、宝塚退団10年を前に熱望した作品にチャレンジ「音楽学校の合格発表を見た時の衝撃にも似た喜びと興奮」

――ここ最近は『最後のドン・キホーテ THE LAST REMAKE of Don Quixote』『クワイエットルームにようこそ The Musical』『レッドブック〜私は私を語るひと〜』と弾けた役が続きましたが、今回演じられるキーラはどんな女性になりそうですか?
咲妃:キーラは自分だけで戦おうとしているように私には映ります。助けを他者に求めてはいけない、求める勇気がない。そんな姿が見ていて苦しいし、励ましたくもなる。強さと儚さのどちらも共存する女性なので、演じさせていただく中で一人の人間としても何か直面するものがありそうだなと思います。
――ご自身は自分ひとりで戦わなきゃ!と思うタイプですか?
咲妃:年々SOSが出せるようになってきました。昔は、自分でなんとかしなきゃ、迷惑をかけてはいけない、できてないのは自分のせいだと自分を追い込むタイプだったんですけど、何か克服できないのならなぜ克服できないのかを考えるようになりました。自分の不出来な部分を認める勇気が備わってきたのかなと思います。昔はできないことを認めたくなかった、知られたくなかったんだと思うんですね。だから、周りの人も助けてあげたいと思っても手を伸ばしづらい状況を自ら作ってしまっていたんですけど、今は「ごめんなさい、できません」「分かりません」「こういうことに困っています」と恥ずかしがらずに言えるようになってきた。年齢を重ねたおかげかもしれないですけど、人として生きやすくなってきているなと感じます。
――それは何か特別なきっかけや出来事があったわけではなく、徐々に自分を解放できるようになった感じですか。
咲妃:昨今様々な作品に出演させていただき、全く違う出自の方と一緒に1つの作品を作るという経験を重ねていく中で、人それぞれでいいんだとか、こういう価値観もありだなとか、周りの方々のおかげで自分の許容範囲が広がってきて。自分の役だけにまっしぐらになるのではなく、作品全体を見渡すことがまず大事という意識の変化が生まれました。35歳にしてようやく学んだんですね。遅い、遅いよって自分に言いたいですけど。

――来年は宝塚退団から10周年を迎えられます。振り返るとどんな10年でしたか。
咲妃:そうだなぁ…。変化の多い10年でした。
――ずっと何かに挑戦されていたようにお見受けします。
咲妃:1人だけで挑戦し続けられたわけではないので。本当に私はご一緒する方々に助けていただいてばかりだったなと思うし、視野を広げていただけたなと心から感謝しています。10年前の自分も一生懸命生きてたな、不器用なりに信念を持ってやってたよねって、懐かしく振り返られるぐらいには大人になったかなと思います。
――この10年で一番大きく変わったなと思われる部分はどこでしょう?
咲妃:う~ん。お仕事に直結してなくてもいいですか? 運転できるようになったことです。世界が広がりましたね。10年前は車の運転なんて怖くてできなかったし、免許を取ってまだ3年くらいなんですけど、3年とは思えない距離を運転しています。
以前出演させていただいた朗読劇にあった、「車ってね、あなたが思っているよりもう少し遠くまで行けるんだよ」というセリフが印象的で、すごく心に残っていました。自分が思い描いているよりも、もっと先の広がりを車は見せてくれるんだ~と、うっすらと憧れを抱き始めました。
実際に免許を取ろうと決めたきっかけは、故郷の宮崎に帰省したときにどこに行くにも両親の手を借りてばかりはいられないという思いだったんですけど、今は両親とドライブを楽しめるようになり幸せを感じています。
――ハンドルを握ると人格が変わる人もいますが、咲妃さんはいかがですか?
咲妃:(マネージャーに向かい)どう、私? 楽しく運転してますよね?
両親も最初は恐る恐る助手席に乗っていましたが、母からは「緩急のある運転でいい」と褒められたので、安定した走りができていると思います(笑)。
――退団10周年が念願の『スカイライト Skylight』から始まりますが、これからまたどんな俳優人生を歩んでいきたいですか?
咲妃:相も変わらず挑戦を続けていきたいですし、素敵な歳の重ね方だねと思っていただけるような、年齢による変化を楽しめる俳優でありたいなと思います。
――改めまして本作に込める意気込みを教えてください。
咲妃:私の全てをかけて挑ませていただきます。暑苦しいかもしれませんが、この思いを劇場で受け止めてください。ご来場をお待ちしております。
(取材・文:田中ハルマ 写真:米玉利朋子[G.P.FLAG inc])
舞台『スカイライト Skylight』は、2027年1月20日~31日神奈川・KAAT 神奈川芸術劇場 大スタジオ、同年2月6日・7日兵庫・神戸文化ホール 中ホールにて上演。
※朴ろ美の「ろ」は「王+路」が正式表記
【公演概要】
『スカイライト Skylight』
2027年1月20日~1月31日:神奈川・KAAT 神奈川芸術劇場 大スタジオ
2027年2月6日・7日:兵庫・神戸文化ホール 中ホール
◆作
デヴィッド・ヘア
◆翻訳
小澤英実
◆演出
杉原邦生
◆出演
咲妃みゆ
山路和弘
中山翔貴