宮野真守、演技への向き合い方は「どんどんシンプルに」 ドラマや舞台の出演を重ね気持ちに変化<『大奥』インタビュー>
累計発行部数700万部(紙+電子)の大ヒット作であり、何度も実写化された、よしながふみの傑作漫画『大奥』が初のアニメ化。6月29日(木)から、Netflixにて世界独占配信中だ。本作の舞台は、謎の疫病・赤面疱瘡(あかづらほうそう)の流行により男子の人口が女子の約4分の1にまで急速に減少し、“男女の立場が逆転”した江戸。さまざまな者たちの愛憎渦巻くなか、運命に翻弄(ほんろう)される男女の切なく美しい愛が描かれる。そんな本作で、京から江戸城を訪れた公家出身の美貌の僧・万里小路有功(までのこうじ・ありこと)役を宮野真守が演じる。今回クランクイン!トレンドは、宮野にインタビューを実施し、アニメ版『大奥』ならではの見どころや、「むしろシンプルになった」という演技への向き合い方について語ってもらった。(取材・文=M.TOKU/写真=小川遼)
【写真】まるで文豪のよう! 着物姿の宮野真守、撮り下ろしカット(全11枚)
■ねたみ・そねみの物語を人間は見たい
――“男女の立場が逆転”した江戸が舞台の本作。最初に原作を読んだときの感想を教えてください。
この作品は「単純に男女を逆転させたらどうなるか」ではなく、「なぜ逆転しなければいけなかったのか」という理由が大事に描かれているんです。疫病の流行によって、男性が減り、将軍職を女性が引き継ぐことで徳川の世を守る必要があるなかで、人々はどういう決断・判断をするのか…その状況自体が本作の魅力であり、原作を読んだ時に「なるほどな」と思わずうなりました。
――「この時代に疫病が流行して男性の数が急激に減少したらどうなるのか」という問いかけが、ある種のリアリティーを生んでいる。
そこが見事ですよね。これがもし史実だったら、同じような判断をするかもなって思わせてくれるというか。そもそも、僕たちが学んだ歴史では「江戸の将軍は男」だと書かれているからそう認識していますが、本当はこの作品のように徳川の世は女将軍だったかもしれない…と。あり得ないようで、あり得そうな設定の深さにどんどん引き込まれましたね。
――本作は登場人物たちの愛憎が渦巻く物語でもあります。
よしなが先生が描く『大奥』はプラトニックなだけじゃなく、人間の業の深さがどんどん描かれていきます。人はどう落ちていくのか、嫉妬にまみれていくのか…。『大奥』はこれまでにもいろいろな作品がありましたが、たくさんの作品にこれだけ反響があるということは、自分がそうなりたいのかは別として、ねたみ・そねみの物語を人間は見たいんだなとも思いました(笑)。
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