宮野真守、演技への向き合い方は「どんどんシンプルに」 ドラマや舞台の出演を重ね気持ちに変化<『大奥』インタビュー>
■人の業を救う存在から、業を背負う存在へ
――確かに(笑)。宮野さんは本作で、公家出身の美貌の僧・万里小路有功を演じます。彼をどういう人物と捉えていますか?
この運命に翻弄(ほんろう)されなければ、きっと真っすぐに仏の道を進んでいた人間だと思います。困っている人や、自分が手を差し伸べられるところに、できる限りの愛情を届けることを目指した人。しかも、彼は柔軟な考え方ができるので、仏の教えを固く守らなきゃいけないというよりも、ちゃんと相手にとって何がいいのか考えられる人物な気がします。そういう意味で、根本では人間の業をちゃんと救ってあげられる人だったんじゃないかな。
――なるほど。
ただ、疫病によって、それどころじゃない世の中になってしまって。そして、徳川の世を守らなければという思いを抱く春日局(かすがのつぼね)らに巻き込まれ、自身の道や思いを踏みにじられ、「大奥」に入ることになります。
そういう理不尽に対して彼は、ただ従うのではなく、ちゃんと異を唱えられる人間ではあります。しかし、とても真っすぐな人間だからこそ、自分の業にも真っすぐ向かってしまい、自身の暗い感情も知ってしまう。きれいなものだけを持っているのではなく、彼も人間としてのぐちゃぐちゃな感情を抱えながら生きているんです。そのなかで重要になってくるのが、家光の存在ですね。
万里小路有功(宮野真守)&徳川家光(松井恵理子) Netflixシリーズ「大奥」独占配信中
――本作の家光は、将軍職を引き継ぐことになった女性です。
家光を愛する自分を見つけた有功は、徳川家=家光を守るために自分を殺して、律して、そして、どんどんもろく崩れていきます。一見すると凛(りん)として強そうに見えますが、実は心の中はボロボロです。
――最初は人々の業を救う道を目指していた彼が、自分の業を知っていくことになった。
そう。そして、その結果、愛に生きる人になる。仏の道が人を救うと考えてきたことはあれども、家光と出会うことで、自分の愛した人を守りたいという最もシンプルな思いに行き着いたのかなと。みんなを救うより、この人を救いたいという気持ちに傾いた。そういう気持ちの変化にもぜひ注目してほしいです。
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