ディズニー『塔の上のラプンツェル』は世界一お金がかかったアニメ!
現在、最前線を走るアニメスタジオのひとつでありながら、ディズニーの創設者であるウォルト・ディズニーの名を冠した超老舗でもあるアニメ制作会社ディズニー・スタジオ。その歴史は順風満帆に思えるが、『アラジン』や『美女と野獣』などに代表される90年代前半の黄金期以降、本作『塔の上のラプンツェル』公開までは、低迷期と言ってもいい状態だった。
90年代後半から、ピクサーの『トイ・ストーリー』シリーズやドリームワークスの『シュレック』をはじめ、ハリウッド大手の劇場用アニメ映画はCGアニメが主流になり、各社が次々とヒットを飛ばしていく。もちろんピクサー作品もディズニー映画ではあるのだが、当時のピクサーはまだ外部の製作会社。老舗のディズニー・スタジオはその潮流に完全に乗り遅れていた。2005年になり、ようやく初のフルCGアニメ映画『チキン・リトル』を発表。ヒットはするものの、かつての黄金期を取り戻すほどではなかった。
●ディズニー・スタジオの真骨頂は“プリンセスとミュージカル”
2006年、ついにディズニー社がピクサーを買収。ディズニーアニメはディズニー・スタジオとピクサーの2スタジオ体制となる。そんな中、両スタジオの統括トップに就任したのが、ピクサーで数々のヒット作を手掛けたジョン・ラセターである(現在はセクハラ行為によってディズニーを退社、スカイダンス社のアニメ部門のトップに就任)。ラセターは、“革新的なピクサー”と“歴史と伝統のディズニー・スタジオ”という両スタジオの特徴を活かした作品を展開していく。
その証拠に、ラセター就任後にディズニー・スタジオが手掛け、高い評価を得た『プリンセスと魔法のキス』(2009)は、世界の流れに逆行した手描きスタイルの2Dアニメ作品であり、ミュージカル、そしてプリンセスが主人公だった。この“プリンセスとミュージカル”こそ、ディズニー・スタジオの真骨頂であり、復活のカギだった。