肉体だけじゃない! 俳優としての器用さも持つ、ドウェイン・ジョンソンのすごさ
プロレスラーから俳優に転じた先人といったら、たとえばハルク・ホーガンがいる。主演作『ゴールデンボンバー』(1989)、それに『マイホーム・コマンドー』(1991)はいずれも傑作だが、ホーガンがその後映画界に名を残すスター俳優になれたかと問えば、残念ながら答えは否と言わざるを得ない。ザ・ロックと同世代のWWEスーパースター、“ストーンコールド”スティーブ・オースティンやトリプルHも映画界に進出して、各々アクション映画の主役を張ったこともあるが、やはりその後が続かなかった。リングの上で異常なほどに光り輝いていたからといって、誰しもがその魅力を映画館のスクリーンで完全に発揮できるかといえば、必ずしもそういうことではないのだ。
同じくWWE出身のジョン・シナも俳優業に進出 (2011年「レッスルマニアXXVII」会見にて) 写真提供:AFLO
WWE発の映画スターとしてドウェイン・ジョンソンに続き得る存在といえば、近年『ワイルド・スピード/ジェット・ブレイク』、『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』(ともに2021)で気を吐いたジョン・シナだろう。後者のスピンオフたる主演ドラマ『ピースメーカー』(2022)しかり、暴力的なまでにビルドアップされた肉体と堅物感あふれる顔面のコンビネーションからは独特の危なさが匂い立っている。超筋肉派の性格俳優として新たなジャンルを切り拓くシナのこれからには大いに期待が持てる。と思いつつ、ジョン・シナがプロレスラーの出自を超えて俳優の一枚看板を掲げるに至った、その道をたどればそこにはやはりドウェイン・ジョンソンがいるのである。硬軟問わずありとあらゆる役柄を器用に演じつつ、その見事すぎる肉体でもって今日は観にきてよかったと、オーディエンスに謎の満足感を与える。そう、やはり肉体の説得力を無視するわけにはいかない。
■荒唐無稽を受け入れさせる、理屈を超えた強靭さ
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