“科捜研コンビ”も! ポニョ放送記念「ジブリ親声優」を振り返り
翁(おきな)「ひーめ! おいで! ひーめ! おいで! ひーめ! おいで!」
嫗(おうな)「あんな美しい娘になるよって、天が前もって見せてくださったんですよ、きっと」
“名優キャスティング”なら、高畑勲監督の遺作となった『かぐや姫の物語』は外せない。月へ帰ることになる絶世の美女、かぐや姫を竹やぶで見つける“育ての親”の老夫婦を、故・地井武男と宮本信子が演じている。姫へのたっぷりな愛情、そして、農村出身の身の丈に合わない高貴な生活に成り上がってしまうというある種の愚かさ。それらが入り交じったキャラクター性を実現させている、ふたりの名演が出色だ。映画の完成を待たずして地井が他界したことから、三宅裕司が一部のセリフと息づかいを担当したことも話題となった。
■『崖の上のポニョ』宗介の両親=山口智子×長嶋一茂/ポニョの両親=所ジョージ×天海祐希
リサ「どんなに不思議で、嬉しくて、驚いてても、今は落ち着くの、いい?」
耕一「女の子だ! 宗介と同じぐらいの子だ!」
フジモト「あんな忌まわしい生き物のどこがいいのだ。人間は海から命を奪い取るだけだ」
グランマンマーレ「ねぇあなた、ポニョを人間にしてしまえばいいのよ」
そして今回放送の『崖の上のポニョ』では、ふた組の両親が登場する。船乗りの夫が長期不在にする中、キビキビした動き(放送される度に“危険運転”とネットを騒がせるが 苦笑)でひとり息子を育てる母リサと、そんなふたりを朴訥ながらも純粋に想う父の耕一。女優業に本格復帰してから数年の山口と長嶋が、お茶の間でのイメージにぴったりな熱演を披露している。
一方の父フジモトと母グランマンマーレは、所ジョージと天海祐希。かつて人間でありながらも、その破壊性に嫌気が差し、今は海に仕える者として生きているのがフジモト。これもまた、浮世離れしてひょうひょうと暮らす(ように見える)所ジョージとのマッチングがぴったりだ。天海祐希の深みを持つ声の低音の響きも、海全体の美しき女神であるグランマンマーレの神秘性を大いに醸し出している。
(文:村上健一)