クランクイン!

  • クラインイン!トレンド

脚本家・坂元裕二ドラマはなぜ時代を超えて“刺さる”のか 『東京ラブストーリー』から『初恋の悪魔』まで

ドラマ

■2010年代『カルテット』

 続いては、2017年放送のドラマ『カルテット』(TBS系)を紹介したい。

 30代の男女4人が共同生活しながら弦楽四重奏のユニットを続けていくという、一見「いまいち共感できなそう」な状況のドラマなのだが、この作品は坂元脚本の大きな特徴である「あるある」が顕著に散りばめられている。

 第1話で、4人が食卓で唐揚げを囲むシーンがある。世吹すずめ(満島ひかり)と別府司(松田龍平)が他2人に断りなくレモンをかけたことに、細かい男・家森諭高(高橋一生)が物申す。それに、主人公の巻真紀(松たか子)も賛同するのだ。

 この、誰しも一度は対峙したことのある「あるある」なシーンが、のちに真紀の離婚原因につながっていたり、物語全体の大きなテーマになっていたりすることが分かる。さらに、こんなセリフにも着目したい。

「夫婦とは、“別れられる家族”なんですよ」第1話・真紀

 はたから見たら幸せな、しかし、いつでも別れられる2人。そんな、多くの人が漠然と感じている不安のようなものを、坂元の脚本ではしっかりと言語化する。これも一種の「あるある」と言えるのではないだろうか。坂元の書くキャラクターたちは、「こんなことを考えているのは自分だけなのでは?」と、ひとりぼっちになってしまっている人にスッと寄り添うのだ。

「泣きながらご飯食べたことある人は、生きていけます」第3話・真紀

 このセリフは、物語の中で“ひとりぼっち”になったすずめに真紀が言ったものだ。落ち込んでも悲しくても、明日は来てしまうし、お腹も減る。30代・夢を追うか諦めるかの瀬戸際にいる“大人”なキャラクターが言うからこそ、生きることにもがく“大人”たち皆に刺さったセリフだったのだと思う。

次ページ

■令和『大豆田とわ子と三人の元夫』

2ページ(全4ページ中)

この記事の写真を見る

関連記事

あわせて読みたい


最新ニュース

  • [ADVERTISEMENT]

    Hulu | Disney+ セットプラン
  • [ADVERTISEMENT]

トップへ戻る