脚本家・坂元裕二ドラマはなぜ時代を超えて“刺さる”のか 『東京ラブストーリー』から『初恋の悪魔』まで
ドラマ『初恋の悪魔』より (C)日本テレビ
坂元裕二が描く最新作『初恋の悪魔』。放送中なのでまだその全貌は明らかになっていないが、既にこれまで挙げた「坂元裕二脚本の魅力」と言えるポイントはしっかりと現れている。
警察署で総務として従事している馬淵悠日(仲野太賀)、同じく経理の小鳥琉夏(柄本佑)、停職を言い渡された刑事・鹿浜鈴之介(林遣都)、生活安全課の刑事の摘木星砂(松岡茉優)という、捜査権のない男女4人が勝手に事件を解決に導こうとするミステリーコメディだ。
この4人は、言ってみれば社会・組織の「はみ出し者」で、本音を殺して周りに同調したり、同調できず孤立したりしながら生きている。第1話でこんなセリフがあった。
「負けてる人生って、誰かを勝たせてあげてる人生です。いい人生じゃないですか」第1話・馬淵
警察学校に通ったもののどうしても警官が向いておらず、総務として働く馬淵。普段は常に誰かに気を遣い、婚約者に堂々と浮気されても笑って許してしまうような男だ。しかし第2話ではこんな本音が出てくる。
「顔はね、笑ってるんです。でもそんなの上っ面で。心ん中じゃ、心の中では。俺を笑うな。俺を馬鹿にすんな。俺にアドバイスすんな。俺に偉そうにすんな。もっと俺を尊敬しろ。いや、なんかそういうねえ、ひんまがったやつだから」第2話・馬淵
ドラマ『初恋の悪魔』より (C)日本テレビ
何かが手に入らなかったとき、「負けた」のではなく「自ら負けを選んだ」と考える人は意外と少なくないと思う。そうすることで、心が傷つかないようにしているのだ。馬淵はそんな自分を、第2話で直視することになる。挫折のなかった人生を送ってきた人は少ない。このシーンの馬淵の言葉が、自分の心のかさぶたを剥がしたという人もいるはずだ。
■きっとあなたにも“刺さる”! 『初恋の悪魔』に今後も注目
馬淵や鹿浜の“痛み”が明らかになってきた『初恋の悪魔』。前半の放送を終え、メインキャラクター4人それぞれが私たち視聴者と重なる部分を見せてくれた。坂元の書くキャラクターは、心の奥にしまっていた自分自身と会わせてくれるように思うのだ。ここからさらに加速していくであろう、脚本家・坂元裕二の最新作『初恋の悪魔』に今後も注目してほしい。
(文:小島萌寧)