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『silent』が「倍速視聴」「ながら見」できないワケ

ドラマ

■後に生きてくるリフレインの効果

 そして何より、本作ではリフレインによる効果が大きい。想から紬に向けた「うるさい」から伝わる真逆の温度感(第1話)。湊斗(鈴鹿央士)が何度も発する「想!」の呼びかけが、高校時代のふたりの関係ゆえだったこと、湊斗から想への友情からだったことの判明(第3話)。春尾(風間俊介)が湊斗に放った「ヘラヘラ生きてる聴者」は、かつて春尾自身が奈々からぶつけられた言葉だったこと(第1話&第8話)。また奈々と春尾のエピソードとしては、奈々が想の前でしていた「リュックのファスナーをわざと閉め忘れる」という行為が、春尾との思い出から来ていたこと(第8話)。さらには、実は偶然による重なりだったという、湊斗がベランダから放したてんとう虫(第3話)と、想が小さな男の子と心を通わせた図書館でのシーンに登場したてんとう虫の図鑑(第7話)も、真摯(しんし)なつくりが呼んだ奇跡だろう。

■倍速では“感じきれない”キャストたちの丁寧な芝居

 重要な演出要素である音楽を多用せず、ベタな盛り上げ方をしない選択も、本作の世界観に合っている。第1話冒頭の雪のシーンや、第5話の紬と湊斗のスマホでの決別シーンなども、あくまでも静かな劇伴だからこそ、登場人物たちの心情がこちらに沁(し)みてくる。

 こうした脚本や演出をキャストたちの丁寧な芝居が生かしきる。特に生まれつきのろう者である奈々を演じる夏帆の引力たるや。これまで夏帆は、ひと言も声で言葉を発していないが、ハンドバッグが登場する夢のくだりや、スマホを耳にあてる姿(第6話)、想と子どもを見守る表情(第7話)、春尾との出会いと決別(第8話)などなど、倍速などできるはずがない。倍速ではこれらの芝居を“感じきること”はできないだろう。もちろん紬のまっすぐな笑顔や、想の時にはにかむような、また寂しげなほほ笑み、湊斗の包み込むような優しい笑みなど、笑みひとつとってみてもすべて魅力的で、同時に、それぞれの涙からも目が離せない。『silent』からは、情報ではなく、気持ちが伝わってくるのだ。(文:望月ふみ)

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