『silent』全11話を通して見えたもの 紬が主人公だったから伝わった物語
ドラマ『silent』最終話より(C)フジテレビ
全11話を通じて見えてきたのは、相手に伝えたい、受け止めたい、つながりたい、理解し合いたいとの気持ちと、そのことの難しさだった。第10話での春尾の「言葉の意味を理解することと、相手の思いが分かるってことは違った」が響く。幾度も登場した「大丈夫」ひとつを取ってみても、都度、発せられるごとに含まれるものは違っていた。
難しい。だからなお、言葉は大切に紡いでいきたい繊細な宝だ。そうしたことを伝え切れたのは、紬が主役だったからだと思う。彼女の、傷つくことを恐れ過ぎず、「出会わなければこんなに悲しい思いをしなくて済んだ」ではなく「好きになれてよかったって思う。思いたい」「伝えるのを諦めないで」と言える、まっすぐに今を見つめられる強さがあったから。
紬も想も、湊斗も、奈々も春尾も、それぞれの家族や友人たちも、歩み寄り、ときにぶつかり傷つけ合い、また寄り添いながら、互いの毎日を過ごしていく。自分自身の中での問答だってあるだろう。そうやって彼らの物語は続いていく。(文:望月ふみ)