『日曜の夜ぐらいは...』で好演 生見愛瑠“めるる”の強い光が、影を一層際立たせる
さらに第3話のラストには、“あの女(矢田亜希子)”が登場した。帰って来ていた母を目にした若葉は、肌身離さず持ち歩いていた通帳を見せてしまう。「お金いるの、出して。でないと私、死んじゃうよ」と言われた若葉は顔面蒼白。通帳を取りだす動きには、迷いがなかった。彼女には母が来ることが分かっていて(実際、そうした予感をばあちゃんに話していた)、自分が渡してしまうことも分かっていた。幼いころから、悪魔のような母親に支配されてきた若葉が、「考える」ことなしに通帳を取り出してしまう反応こそがリアル。
第1話、第2話でも印象的な芝居はいくつもあった。サチと翔子との出会いの場面での畳みかけるようなオタク気質な喋り口調(素晴らしく聞き取りやすかった!)、年齢に似合わぬ哲学的な言葉の数々や、ばあちゃんとのやりとりなどなど。
ドラマ『日曜の夜ぐらいは...』 (C)ABCテレビ
そして、はしゃぐ姿にしろ寂しげな表情にしろ、生見の姿から一番に伝わってくるのは、彼女が芝居を楽しんでいるということである。俳優デビューからほんの2年。まだまだ成長過程に違いない。これからの道には努力だけでなく、少なからず「運」も必要。本作で生見は、清野と岸井と組み、すぐ横には子役から活躍する岡山天音もいる。さらに、ばあちゃんと孫として、宮本信子とがっつりと組むという、多くの俳優が喉から手が出るほど望むだろう機会を得た。
何より、彼女自身が持っている光は努力して持ち得るものではない。光も闇も感じさせてくれる生見だからこそ、もっともっとその演技を見たいと思わせてくれる。(文:望月ふみ)
ドラマ『日曜の夜ぐらいは...』は、ABCテレビ・テレビ朝日系にて毎週日曜22時放送。