『国宝』リアル“喜久雄”! 実は梨園出身じゃない歌舞伎役者3選 人間国宝から注目若手イケメンまで

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6月初旬の公開開始から、勢いが衰えることのない映画『国宝』。吉沢亮演じる喜久雄が、ヤクザ一家から歌舞伎の世界に足を踏み入れ芸の道を突き進む姿が描かれる本作。現実世界でも、梨園出身ではないのにも関わらず歌舞伎界でスターとなった人が。ここでは、そんな“リアル喜久雄”役者たちを紹介していこう。
【写真】化粧アリも普段のお顔も素敵 “リアル喜久雄”役者たち
■片岡愛之助
『国宝』を見た方ならよくご存じかと思うが、歌舞伎の世界では“血”がなにより大切だ。大名跡といわれる名前は基本的に世襲制。歌舞伎役者から生まれた男児は未就学のうちから初舞台を踏み、その大名跡を継ぐため芸の道をひた走ることになる。しかし、道は一本ではない。
歌舞伎の舞台ではもちろん、映画やドラマでも活躍し、歌舞伎ファン以外からも人気を集める俳優、六代目片岡愛之助。工場を営む両親は、愛之助の習い事の一つとして松竹芸能の子役オーディションを受験させる。子役活動の一環で歌舞伎にも出演したことをきっかけに、十三代目片岡仁左衛門さんに見出され、二代目片岡秀太郎さんの誘いで片岡一門の部屋子(幹部俳優と楽屋を共にし、作法から芸までを間近で仕込まれる立場)へ転身することとなった。
愛之助自身も、『国宝』喜久雄にリアルに感情移入したといい、「まさしく“ああいう世界”なんですよね。僕の親は任侠ではないし、100%同じというわけじゃありませんけど、いわゆる“外の世界”から飛び込んできた人間でしたから」(※1)とインタビューで語っている。
■坂東玉三郎
喜久雄や横浜流星が演じた俊介と同様に、女形として数々の当たり役を持つ五代目坂東玉三郎も、梨園の生まれではない。料亭を経営する両親のもとに生まれた玉三郎だが、1歳半の時に小児麻痺にかかってしまう。左足に残った麻痺のリハビリのため通った日本舞踊が、歌舞伎界への入り口になった。
6歳の時、十四代目守田勘弥さんの部屋子となった玉三郎。小児麻痺の影響で左利きであったことや、女形としては長身(173cm)であることなど、様々なハードルを抱えながらの芸の道だった。しかし、特に舞踊の評価は非常に高く、前述の日本舞踊はもちろん、10代半ばに始めたバレエでも高い実力を持つ。2012年には重要無形文化財保持者に各個認定され、いわゆる“人間国宝”となっている。
■中村鶴松
若手歌舞伎役者の中にも、期待の“リアル喜久雄”が。現在30歳の二代目中村鶴松は、2021年の八月歌舞伎で一般家庭出身としては異例の主役に抜てきされる。立役と女形どちらもこなす若きスターだ。
児童劇団からのオーディションを勝ち抜き、5歳で歌舞伎に初参加した。8歳の時に演じた『野田版 鼠小僧』の孫さん太の演技が注目され、十八世中村勘三郎さんの部屋子に。勘三郎さんについて、鶴松は格別な思いをインタビューで語っている。「何より勘三郎さんの人間性。裏表がなく喜怒哀楽がすごい人でした。ただ、怒る時でも、何か1ついいところも指摘する。(中略)僕もいっぱい怒られましたが、頭ごなしに怒るのではなく愛情のある怒り方でした」(※2)。血が運命を左右する歌舞伎界だからこそ、血のつながり以上の固い結びつきがこの“親子”にはあったのかもしれない。
そんな鶴松は2022年より自主公演「鶴明会」を実施。「明」は、勘三郎さんの本名「波野哲明」から取った。ほか、バラエティ番組に出演するなど、敷居が高いと感じる人も多い歌舞伎への間口を広げている。
引用:「片岡愛之助」インスタグラム(@ainosuke_kataoka)
「中村鶴松」インスタグラム(@tsurumatsu_nakamura)
※1 片岡愛之助「血には勝てないと思っていた」 大ヒット映画『国宝』で重なった“歌舞伎の重圧”と覚悟 ENCOUNT
https://encount.press/archives/823585/(参照 2025‐7‐11)
※2 中村鶴松「サラリーマン家庭から5歳で歌舞伎の初舞台を踏んだ。〈孫さん太〉で中村勘三郎さんに見いだされ、褒められたい一心で演じている」 婦人公論.jp
https://fujinkoron.jp/articles/-/16371(参照 2025‐4‐4)