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<今夜金ロー>『ズートピア』公開から9年、「今」の日本から見た“動物たちの理想郷”の闇と希望

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■ズートピアが内包していた闇――表面上だけの多様性

 『ズートピア』公開から9年が経つ今、日本は大きく変わりつつある。インバウンド事業が大きく伸び、街に出ればアジアや欧米からやってきた観光客があふれ、銀座や京都を歩けば日本語が聞こえてこない瞬間すらある。ジェンダー意識も変化し、「LGBTQ」というワードを知らない人はいない。自分と違う人を受け入れることが当たり前になった。あくまでも“表面上”だが。

 顔の見えないSNSでは、毎日のように攻撃的なポストがバズっている。特定の国の人や、志向を持つ人を大きくくくって批判するような声も目に入るが、これにはニックが子どもの頃、肉食のキツネだということを理由にヒツジの子どもたちによって口輪をはめられたエピソードとも重なる。自身ではなく種族によって“危険”と判断された幼いニックは、「どうせキツネは信用されない」と諦めるように。また、ジュディは警察学校を首席で卒業し警察官となるが、“ウサギ=小さくか弱い生き物”というイメージから駐車違反の取り締まりという簡単な仕事ばかりを押し付けられる。現実の日本では、“女性には管理職は務まらないだろう”といったイメージがいまだに残っていたりする。ズートピア警察が(政治的な理由で)ウサギを採用したように、女性の管理職を増やそうという動きがあっても、実際にはまだまだ課題はある。

映画『ズートピア』場面写真 写真提供:AFLO
 しかし、ジュディは“差別されてかわいそう”なだけのキャラクターではない。ジュディ自身も、「駐車違反取り締まり」=優秀な自分がやるべき仕事ではないと職務内容に優劣をつけていたり、幼い頃のトラウマから常にキツネ撃退スプレーを持ち歩いていたりする。そしてジュディが肉食動物たちに対して放った言葉によって、バディ関係、ひいてはズートピア全体に亀裂が生じていく。自分が持つ偏見や差別意識には気が付きにくいものだが、知らず知らずのうちに誰かを傷つけ、分断を生んでいるかもしれないことを、ズートピアの住人たちは教えてくれる。

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■“ズートピア化”していく日本に、ニック&ジュディは現れるか

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