<今夜金ロー>『ズートピア』公開から9年、「今」の日本から見た“動物たちの理想郷”の闇と希望
とはいえ、ジュディは差別主義者ではない。自身の持つ意識に気づいていなかっただけだ。そして彼女は作中でそれに気づき、知ることで変わっていく。そして「どうせ自分は信用されない」と諦めていたニックも、ジュディが自分を信用してくれたことで変化していく。
『ズートピア』劇中では、事件は解決するが、問題は解決しない。事件によって、一部の動物たちの心にはきっとなにか変わった部分があるだろう。“理想郷”ズートピアでは、やっぱり肉食動物は危険だし、草食動物は庇護されるべきだ、という意識は残り続けているはずだ。そんな中でも、小さなウサギのジュディが警察官として活躍したことや、キツネのニックが新たに警察官になったことで、2人、そしてウサギ・キツネという種族に対する見方は少なからず変わっただろう。この一連のニュースは案外すぐにズートピアの住人からは忘れられていくかもしれない。でも変化した意識は、やがて大きな潮流となっていく。
映画『ズートピア』場面写真 写真提供:AFLO
ズートピアでは、表面上の多様性で蓋をしていた不安や不満、偏見が、大きな事件を引き起こした。今の日本では、“蓋”がいまにも外れそうな空気があちこちにまん延しているが、ジュディやニックのように未来への希望になる存在は現れるだろうか。(文・小島萌寧)
映画『ズートピア』は12月5日21時(※放送枠15分拡大)日本テレビ系『金曜ロードショー』にて放送(本編ノーカット)。

