2025年、面白かったドラマ! 人気脚本家の新たな名作、“死”に向き合った良作も
連続テレビ小説、大河ドラマに並び注目度の高い枠。2025年は、1月期に『御上先生』、4月期に『キャスター』、7月期に『19番目のカルテ』、10月期に『ザ・ロイヤルファミリー』という4作が放送された。
『御上先生』は、文部科学省のエリート官僚・御上孝(松坂桃李)が、ある事情から超進学校に赴任し、生徒たちと共に日本の教育や社会にはびこる問題に立ち向かう姿を描いた。詩森ろばの脚本は、現代の日本の教育や官僚のあり方に強いメッセージ性を含んでおり、その重厚な脚本に、主演の松坂をはじめ、生徒役の若手俳優たちも期待に応え好演が目立った。
『ザ・ロイヤルファミリー』は競走馬にかける人々の物語という、一見なじみが薄いジャンルを描いているが、そこはさすが日曜劇場。“継承”というテーマで重厚な人間ドラマに昇華した良作だった。レースシーンも、第1話、2話では、ゴール前の描写など、ややCG感が否めない部分もあったが、途中からはジョッキーカメラの映像を駆使するなど見せ方を工夫して、決して陳腐に見えないような臨場感あふれるレースシーンになっていた。20年という歳月を描くだけに、やや足早になってしまう部分もあったが、劇的欲求を得られる作品になった。
■三谷幸喜、野木亜紀子、大石静…人気脚本家の新たな名作も
10月クールで大きな注目を集めたのが、三谷幸喜が、1984年の渋谷を舞台に希望を見出す人たちを描いた『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』(フジテレビ系) 。三谷にとって実に25年ぶりとなる民放GP帯連続ドラマ脚本。“視聴率”的に不調と伝えられることが多かったが、作品の内容的には、W・シェイクスピアの『ハムレット』の登場人物になぞらえたキャラクターたちが、1980年代という風俗にうまく溶け込み、演劇という“文化”を伝えていくというストーリーラインは、非常に見応えがあった。
同じく10月クールでスタートした野木亜紀子脚本の『ちょっとだけエスパー』(テレビ朝日系)も、観始めと観終わりのテイストが大きく変わるダイナミックな作品だった。会社をクビになり、すべてを失ったサラリーマンの文太(大泉洋)が、謎の企業「ノナマーレ」に就職して“ちょっとだけ”能力を持ったエスパーとして世界を救う――。前半は影を落とす部分はありつつ、コミカルな展開だったが、途中から状況は激変。最終的には「生きること」への希望がジンワリと伝わる、恩着せがましくないエールも秀逸だった。豪華キャストの競演と相まって、非常に面白いドラマになった。
7月クールに放送された大石静脚本の『しあわせな結婚』(テレビ朝日系)。過去何度も共演している阿部サダヲと松たか子が、風変わりな夫婦になって繰り広げるサスペンスだ。大石自身、2人で「ホームドラマ」を描きたかったと話していたが、互いにセリフなしで“間”を埋めるのが非常に秀逸な俳優なので、コミカルな芝居はもちろん、サスペンスも非常にいい。松演じるネルラ家ファミリーのアクの強さも、癖になるドラマだった。

