なぜ映画業界は山田悠介が大好きなのか。『パズル』『ライヴ』連続公開
「山田作品の実写化というだけで、ファンの方の興味は引けます。ここも実写化に向いているポイントになりますよね。ですが、山田悠介ファンについてリサーチしたところ、熱烈なファンのかたは、どの山田作品を実写化しても、自分たちの山田ワールドを持っているため、結局、批判が出てしまう。そのような意見が多かったんです。ということは、どれだけ原作に忠実に実写化したとしても、それぞれが有している山田ワールドには太刀打ちできない。だったら、あえて“こんな形での実写化があるんだ!!”という驚きをファンに与えたいと、『パズル』は原作をほとんどなぞっていないんです」。
とはいえ、すべてを変えてしまったら、それはもはや山田悠介の『パズル』ではないような気もするが…。「物語の核やテーマの部分だけは揺るがさないように、あとは監督に自由に(脚本を)書いてもらいました」と、制作プロデューサー。そこには、こんな狙いも。
「弊社が出版と連動しているなかで、山田作品は中高生にはほぼ行き渡っていることがわかりました。一方で、読んでいない層を調べると、“20代後半から上の男性”という結果が出てきた。そこの層に山田作品を知ってもらい、新しい読者層になってもらうためにも、映画『パズル』はメインターゲットを中高生ではなく、それより上の世代を狙っています。そこで、20代後半からの男性層が楽しめるように、作品はR15+(15歳以上が鑑賞可能)になっているんです」。
映画を通して、山田悠介作品のファンになってもらう。自社の出版物を自社で映画化して公開するという、『パズル』はKADOKAWAだからこそ実現できた映画と言えよう。だが、ここで疑問が。核の部分を残したとはいえ、「話の物語自体、原作とはまったく違っている」とプロデューサーが断言するほど原作を変えてしまい、山田氏は何も言わなかったのだろうか。
「今回の映像化はお任せだったので、大目に見てもらったところもあったと思うのですが、自由にやらせてもらえました」。
そして、「公開は少し先ですが、『パズル』と同時進行で撮影していた『ライヴ』も、かなり面白いことになっているので、期待していてください」。
KADOKAWAにとって、まさに今年は山田イヤー。しかも、これまでの山田作品の実写化と違い、かなり思い切ったことを実現させている。今後の実写化山田作品に与える影響は大きそうだ。