サメに、クジラに、海難事故… 海に行く前に見ておきたい“海洋サバイバル映画5選”

梅雨明け前にも関わらず、全国各地で猛暑日を記録する日本列島。海水浴シーズンは、もうまもなくというところまで来ている。夏はもちろん、四季折々によって色々な顔を見せる海に魅了される人が多い一方、自然の恐ろしさを人々に嫌と言うほどみせつけてきた歴史もある。今回は“厳しい海”が巻き起こした海洋サバイバル映画をピックアップしていきたい。
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海洋サバイバル映画の最大の枷は、船という決められた場所以外に逃げ場がないこと。閉塞感があればあるほど、緊張感は高まり、登場人物に感情移入する。
最初に紹介するのは『白鯨との闘い』。邦題から、白鯨とのバトルがメインの作品だと思われがちだが、惹きつけられるのは、船が沈められてからのサバイバル生活だ。限られた食料と飲料水、そして頼りないボートだけが命をつなぐために残された唯一のもの。そんな極限状態のなか、クリス・ヘムズワース演じる一等航海士の主人公をはじめ、武骨な男たちが生きるために葛藤しながらもさまざまな選択をしていく姿は、たまらない緊張感がある。迫力ある映像シーンと共に、重厚な大海原での人間ドラマが堪能できる。
次は、第85回アカデミー賞に11部門ノミネートされ、監督賞や撮影賞など4部門を受賞した『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』。南仏で動物園を経営していた主人公パイの一家は、諸事情によりカナダへの移住を決心したが、途中、海難事故に遭遇し船は沈没。ライフボートで命からが脱出したものの、乗組員は全員死亡してしまい、オランウータンやハイエナ、シマウマ、リチャード・パーカーと名付けられたベンガルトラとの漂流生活が始まる……という話。日本での公開時には、ラストの解釈で物議を醸すなど、漂流サバイバル映画とひとくくりで語ることができないほど、込められたメッセージは奥が深い。『白鯨との闘い』とは全く違う、ファンタジーの要素がふんだんに散りばめられた漂流サバイバル映画だ。
最後に紹介するのは“自然の恐ろしさ”が嫌というほど身に染みる映画『オープン・ウォーター』。1998年にオーストラリアで起きた実際の海難事件を元に製作されており、物語を鑑賞しているというよりは、ドキュメンタリーを見ているようなリアリティーで、後味も悪い。登場人物に感情移入できるか……という視点では、物語性は薄いが、「これが海の怖さなんだ」というメッセージは、他のどんな海洋サバイバル映画よりも胸に響く。
大自然の脅威を描いた作品は多い。昨年から今年にかけて、エベレストを題材にした“山の映画”が立て続けに公開された。山の怖さも身につまされるものがあるが、イメージ的には、山は登場人物が自らの意志で向かってゆき、困難に陥ることが多いが、海は意志に反して巻き込まれてしまう不条理が常だ。そんな違いに注目してサバイバル映画を観てみるのも面白いかもしれない。(文・磯部正和)
<海に行く前に見ておきたい海洋サバイバル映画5選>
『白鯨との闘い』(16)
『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』(13)
『オープン・ウォーター』(05)
『タイタニック』(97)
『オール・イズ・ロスト ~最後の手紙~』(14)